「5月病」って何?
「5月病」って、何でしょうか?
正式な病名ではありませんが、4月に入学した新入生、4月から新入社員になった人などが、5月ごろに調子を崩すことがあるため、慣用的に「5月病」と呼ばれています。
「5月病」は、新入生や新入社員のように、「環境」や「場」が変わった人に起こりやすい症状です。ストレス用語で言うと、「リロケーション・ストレス」の一つと言えます。
「リロケーション・ストレス」とは、入学、入社、転勤、人事異動、引っ越し、施設への入居、災害避難など、「場」の移動によって起こるストレスです。
新しい場に変わると、その場に適応するためにエネルギーを使います 。たくさんエネルギーを使うと、エネルギー不足になって、ストレスや不調を生む一因となります。
(「リロケーション・ストレス」については、
こちらのページ をご覧下さい)
「場」が変わると、なぜストレスが生まれるのか?
「場」が変わると、どうしてストレスが生まれるのでしょうか?
それは、「ルーティン」をつくり直さなければいけなくなるからです。
ルーティンというのは、実は、人間にとって一番ストレスが少ない方法です。毎日繰り返しやっていることは 脳内で処理が自動化されていると考えられています。
たとえば、家に帰るときに、ボーッとしていたのに、「気づいたら、家にたどり着いていた」という経験はないでしょうか。
ルーティン化されていることは、何も意識していなくても、自動的にできるのです。
「体が覚えている」とか「目をつぶっていてもできる」といった言葉があるように、自動化されていると、意識しなくてもできてしまいます。
ところが、場が変わると、それまでのルーティンが使えなくなります。
新しく会社や学校に入った人は、通勤・通学の経路も変わります。どの交通機関を使うか、道を右に曲がるか左に曲がるか、など、全部を意識してやらないといけませんので、エネルギーを使います 。
また、人間関係も変わることが多いですから、人間関係にも意識を向けなければいけません。エネルギーが減って、徐々に疲れがたまってきます。
「ルーティンづくり」がストレスを減らす
人間は、何かをする前には、頭で考えて、意思決定をして行動を選んでいます。
一つひとつの行動の前に、考え、意思決定するプロセスが伴う。
ルーティン化しておくと、「1の次は2、2の次は3」と手順が決まっているので、いちいち考えて意思決定する必要がなくなります。その手順を繰り返し行うことによって習熟していくと、脳内で自動処理されるようになって、頭を使うプロセスをほぼスキップできるようになります。こうした現象は、「オートマティック・プロセッシング(
Automatic Processing)」、「オートマティシティ(Automaticity)」と呼ばれています。
考えるプロセスを全部スキップ。考えなくてもできる。
考えなくてもできるので、脳の負担が減って、ラクになります。エネルギー(リソース)に余裕ができてストレスが減少しやすくなります。
そういう意味で、「ルーティンづくり」というのは、非常に効果的なストレスケアと言えます。
ゴールデンウィークでリセットされてしまう
新入生、新入社員の方は、まだ完全に「ルーティン」ができあがっていないかもしれません。慣れない生活で、かなり疲れがたまっているだろうと思います。
ゴールデンウィークは、4月からの疲れを回復させるためにとても有効な休みです。
ところが、ゴールデンウィークが逆効果になることがあります。疲れはとれるかもしれませんが、そのかわりに、4月からつくってきた「新しいルーティン」が、ゴールデンウィークでリセットされてしまうことがあるからです。
休み中に、夜更かしをして、不規則な生活を送ったりすると、固まりつつあったルーティンが崩れてしまいます。
ルーティンが崩れてしまうと、休み明けに、ルーティンづくりのやり直しです。何でもそうですが、「やり直し」というのはけっこうつらいものです。モチベーションの低下や不調のきっかけとなってしまうことがあります。それが、5月病と呼ばれる症状につながることがあります。
「新しいルーティン」をつくってしまいましょう
大事なことは、ルーティンを確立させることです。ルーティンができるまでは、なるべく土日などの休日も平日と同じ時間に起床・就寝をして、ルーティンを定着させてしまいましょう。ゴールデンウィークでルーティンが乱れてしまった方も、ちょっと大変ですが、もう一度ルーティンをつくりましょう。
ルーティンができあがれば、自動化されて、ラクになってきます。
いきなり全部のことをルーティン化できなくても大丈夫です。少しでもルーティン化できる部分があれば、手順を決めてしまって、ルーティン化していきましょう。
ルーティンをつくって、少し負担を軽くして、自分にとって大切なことのためにエネルギーをとっておいて下さい。
*習熟による自動化によって脳の負担がいかに減るかを、画像で見たい方は、 英語ページですが、米国政府のサイトに出ています。
ご覧になる前に簡単に説明しますと、脳の断面図の左側の図は、自動化されていないときの脳の状態。右側の図は、自動化された後です。右側のほうが光っている部分が少ないのは、自動化によって、脳の負担が減っていることを示しています。言い換えれば、「脳のストレス」が少なくなっているということです。
こちら (アメリカ連邦航空局サイト)から。
著:加藤貴之(ストレスケア・コム)