自動運転も、ストレス状況には弱い?
AI(人工知能)や自動運転が身近になってきました。
テクノロジーが進化した時代には、ストレスとの付き合い方はどう変わっていくでしょうか。
自動運転について考えてみるとわかりやすいと思います。自動運転は、次の4段階のレベルが定義されています。
レベル3では、緊急時だけ人間が操作することになっています。言い換えれば、ストレスの生じやすい状況では人間が運転するということです。
レベル4にまで進んで、すべてが自動化されたとしても、機械やシステムは一定の確率で故障します。システムが故障した際には、自動運転が使えなくなって、人間が対応しなければならなくなります。突然、システムが故障したときには、人間にとって、かなりストレスの高い状態になります。
自動運転化が進むと、安全性が高まり、便利になりますが、それでも、ストレスの高い状況では、人間が対応せざるを得なくなると思われます。
自動運転技術(オートパイロット)の進んでいる航空業界でも、悪天候時などストレスの高い状況ではパイロットが操縦しています。自動車を運転する場合も、悪天候の日に、レーダーに頼ってすべて自動運転させるのは心配ではないかと思います。
テクノロジーが進化した時代には、ストレスとの付き合い方はどう変わっていくでしょうか。
自動運転について考えてみるとわかりやすいと思います。自動運転は、次の4段階のレベルが定義されています。
レベル1 安全運転支援 |
アクセル・ハンドル・ブレーキ等のうち、いずれか1つをシステムが行う |
レベル2 準自動走行 |
アクセル・ハンドル・ブレーキ等のうち、複数をシステムが行う |
レベル3 準自動走行 |
アクセル・ハンドル・ブレーキ等のすべてをシステムが行い、ドライバーは緊急時などシステムが要請したときのみ操作 |
レベル4 完全自動走行 |
アクセル・ハンドル・ブレーキ等のすべてをシステムが行い、ドライバーはまったく関与しない |
レベル3では、緊急時だけ人間が操作することになっています。言い換えれば、ストレスの生じやすい状況では人間が運転するということです。
レベル4にまで進んで、すべてが自動化されたとしても、機械やシステムは一定の確率で故障します。システムが故障した際には、自動運転が使えなくなって、人間が対応しなければならなくなります。突然、システムが故障したときには、人間にとって、かなりストレスの高い状態になります。
自動運転化が進むと、安全性が高まり、便利になりますが、それでも、ストレスの高い状況では、人間が対応せざるを得なくなると思われます。
自動運転技術(オートパイロット)の進んでいる航空業界でも、悪天候時などストレスの高い状況ではパイロットが操縦しています。自動車を運転する場合も、悪天候の日に、レーダーに頼ってすべて自動運転させるのは心配ではないかと思います。
AI時代には「ストレスの高い仕事」だけになる
自動運転以外の、一般の仕事は、どうでしょうか。
単純作業は、プログラム化しやすいので、機械やコンピュータがやるようになるでしょう。AIが進化すれば、中くらいの難易度の仕事もできるようになります。そうなると、人間に残される仕事は、難しい仕事だけになっていきます。
ストレスとの関係で言えば、単純作業から解放されるという点では、ストレスは減ります。しかし、難しい仕事ばかりになると、ストレスはどんどん高まっていきます(スマイル・カーブ)。
仮に、AIが究極的なレベルにまで進化しても、「責任の重い判断」を、AIに任せるわけにはいかないはずです。AIには責任をとることができないからです。
AIの支援を受けることはできるでしょうが、責任をとることのできる人間が、最終判断を下すしかありません。また、システム故障時には、どんなにすぐれたAIも役に立ってくれません。
つまり、「クリティカル(重大)な状況」=「ストレスの高い状況」だけは、人間が対応することになるはずです。
「人間」と「AI」の役割分担
本当は、ストレスの少ない状況を人間が担当して、ストレスフルな状況のときにはAIにお任せしたいところですが、現実には、逆になりそうです。
単純作業は、プログラム化しやすいので、機械やコンピュータがやるようになるでしょう。AIが進化すれば、中くらいの難易度の仕事もできるようになります。そうなると、人間に残される仕事は、難しい仕事だけになっていきます。
ストレスとの関係で言えば、単純作業から解放されるという点では、ストレスは減ります。しかし、難しい仕事ばかりになると、ストレスはどんどん高まっていきます(スマイル・カーブ)。
仮に、AIが究極的なレベルにまで進化しても、「責任の重い判断」を、AIに任せるわけにはいかないはずです。AIには責任をとることができないからです。
AIの支援を受けることはできるでしょうが、責任をとることのできる人間が、最終判断を下すしかありません。また、システム故障時には、どんなにすぐれたAIも役に立ってくれません。
つまり、「クリティカル(重大)な状況」=「ストレスの高い状況」だけは、人間が対応することになるはずです。
「人間」と「AI」の役割分担
状況
|
ストレス
|
対応主体
|
||
1 ノーマルな状況 | 低 |
|
||
2 重大な状況 | 高 |
|
||
3 システム故障の状況 | 高 |
|
本当は、ストレスの少ない状況を人間が担当して、ストレスフルな状況のときにはAIにお任せしたいところですが、現実には、逆になりそうです。
対応のヒントは、「イージス艦のストレス研究」が示してくれる
AI時代を迎えるに当たっては、「人間の仕事」と「ストレス」はますます切り離せなくなると予想されます。
では、どんなことに気をつけるべきでしょうか。
ヒントは、先行事例にあります。その一つは、アメリカ海軍の「イージス艦のストレス研究」です。
1980年代に導入されたイージス・システムは、「戦時下のAI(AI at war)」と呼ばれてきました。イージス・システムは、最先端のテクノロジーを使った画期的なシステムのはずでしたが、初期のイージス艦は重大死亡事故を引き起こしました。
なぜ最先端のAIシステムを使っているのに重大事故が起こってしまったのか。
事故の調査過程で、初期のイージス・システムには「ストレス」の要素が組み込まれていなかったことが大きな原因であると判明しました。イージス・システムは1970年代に開発されたものであり、当時は、ストレスがそれほど大きなウェイトを占めるとは、認識されていませんでした。
では、どんなことに気をつけるべきでしょうか。
ヒントは、先行事例にあります。その一つは、アメリカ海軍の「イージス艦のストレス研究」です。
1980年代に導入されたイージス・システムは、「戦時下のAI(AI at war)」と呼ばれてきました。イージス・システムは、最先端のテクノロジーを使った画期的なシステムのはずでしたが、初期のイージス艦は重大死亡事故を引き起こしました。
なぜ最先端のAIシステムを使っているのに重大事故が起こってしまったのか。
事故の調査過程で、初期のイージス・システムには「ストレス」の要素が組み込まれていなかったことが大きな原因であると判明しました。イージス・システムは1970年代に開発されたものであり、当時は、ストレスがそれほど大きなウェイトを占めるとは、認識されていませんでした。
アメリカ海軍は、ストレスを徹底的に研究
事故を受けて、アメリカ連邦議会は、ただちに予算をつけて、海軍にストレスの研究を命じました。「ストレスを研究しなければ、国家を防衛できない恐れがある」という認識に至ったのです。
海軍の研究は1990年から1999年までの10年間に及び、実戦配備されている艦隊の多くの将兵が協力しました。
そもそも戦時下というのは、将兵たちに強いストレスがかかるものです。偶発的なことが次から次へと発生しますから、大きなストレスです。そうしたストレス状況下で、きちんと使えるように、イージス・システムのAIは進化していきました。
研究結果は、250本以上の論文にまとめられました。そのうち、12本が厳選されて450ページほどの書籍にまとめられ、一般社会にも役立つようにアメリカ心理学協会によって公開されています。
米心理学協会発行
AI時代のストレス・マネジメントを考えるうえでも、また、AIのシステム設計者にとっても、非常に示唆に富む本です。
ストレスを考慮したAIが設計され、ストレスを考慮したトレーニングが行われれば、ストレスによる問題を乗り切ることは可能だという希望を感じられる本です。
わかりやすい形にして、アウトラインを「ストレスケア・コム」にもアップしていく予定です。
海軍の研究は1990年から1999年までの10年間に及び、実戦配備されている艦隊の多くの将兵が協力しました。
そもそも戦時下というのは、将兵たちに強いストレスがかかるものです。偶発的なことが次から次へと発生しますから、大きなストレスです。そうしたストレス状況下で、きちんと使えるように、イージス・システムのAIは進化していきました。
研究結果は、250本以上の論文にまとめられました。そのうち、12本が厳選されて450ページほどの書籍にまとめられ、一般社会にも役立つようにアメリカ心理学協会によって公開されています。
米心理学協会発行
AI時代のストレス・マネジメントを考えるうえでも、また、AIのシステム設計者にとっても、非常に示唆に富む本です。
ストレスを考慮したAIが設計され、ストレスを考慮したトレーニングが行われれば、ストレスによる問題を乗り切ることは可能だという希望を感じられる本です。
わかりやすい形にして、アウトラインを「ストレスケア・コム」にもアップしていく予定です。