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『THE21』(1997年12月特別増刊号)掲載原稿(P52~53)より一部抜粋
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■ 30代を襲うさまざまなストレス
■ 「大きなストレス」と「小さなストレス」
■ ストレスは「バランスをとりなさい」というサイン
■ 「大きなストレス」と「小さなストレス」
■ ストレスは「バランスをとりなさい」というサイン
[用語解説] デイリー・ハスルズ
「デイリー・ハスルズ」とは、日常生活上で発生する「小さなストレス」のことを言う。例えば、家族と言い争いをした、部屋が汚れていて不快だ、仕事のやり方が変わった、というような小さなものである。近親者の死、失業、離婚など大きな「ライフ・イベント」が引き起こすストレスよりも、小さなストレスの蓄積のほうが健康に影響があるという考え方で、米国の心理学者リチャード・ラザルス博士が唱えた。
「デイリー・ハスルズ」とは、日常生活上で発生する「小さなストレス」のことを言う。例えば、家族と言い争いをした、部屋が汚れていて不快だ、仕事のやり方が変わった、というような小さなものである。近親者の死、失業、離婚など大きな「ライフ・イベント」が引き起こすストレスよりも、小さなストレスの蓄積のほうが健康に影響があるという考え方で、米国の心理学者リチャード・ラザルス博士が唱えた。

30代を襲うさまざまなストレス
「私はもう負け組なんです」
伊藤圭一郎さん(仮名37歳)は不眠を訴えながら、さみしそうにこういう。
多くの企業では、能力主義が進み、若手が積極的に登用されるようになった結果、これまで40歳過ぎくらいでなされていた勝ち組と負け組との選別が、30代半ばに早まるようになってきた。
「二年前に昇進が見送られた時点で私の将来は終わったんです」
伊藤さんは、夜になると、そのときの情景が目に浮かんで眠れなくなる。会社も休みがちになり、いまでは以前の力すら発揮できない状態になってしまった。
一方、勝ち組といわれる側も決して楽ではない。山本昌彦さん(仮名・36歳)は、早く昇進したために年上の部下を使うはめになってしまった。思い悩んだ山本さんは胃潰瘍を患って入院し、いまでは「昇進をしなければよかった」とまで思うようになっている。
伊藤さんや山本さんの例をみるまでもなく、30代はビジネスマンにとってつらい時期である。会社からは重要なプレーヤーとして期待され、責任の重い仕事を任される。一方で、何人もの部下をもたされ、マネージャーとしての役割も要求される。上からは押さえつけられ、下からは突き上げを食うというサンドイッチ状態が始まる。
これに加えて、最近ではリストラによる人員削減が進んでおり、仕事のしわ寄せがくるのも実働部隊としての30代に対してである。

「大きなストレス」と「小さなストレス」
不快な気分にさせるストレスには、大きく分けると二種類ある。
一つは、急激な変化による精神的ショックだ。災害、解雇、離別などが典型的な例だ。
もう一つは、じわじわと続く小さなストレスだ。
実は、いちばん厄介なのは、こうした「ちょっとした不満」などの小さなストレスである。大きなストレスは、その要因がはっきりしているため、対処すべきことが明らかである。しかし、「不満なんか誰にでもある」といった理由から、小さなストレスは無視されがちだ。それがいつの間にか蓄積されてしまうのだ。
中には、自分の気持ちを抑えつけていくうちに、心や体の状態に鈍感になってしまうという症状もある。こうなると、体のどこかに変調をきたしても、心がSOSを叫んでいても、自分では気がつかない。ある日突然、精神状態がおかしくなり、本人も周りもびっくりする。
人一倍がんばっていた人が突然やる気を失う「燃え尽き症候群」や、膨大な情報に囲まれ、処理しきれず、疲れ切ってしまう「情報疲労症候群」も、自分の発している小さなサインを見落とすことによって起こることが多い。

ストレスは「バランスをとりなさい」というサイン
もともとストレスとは、心身のバランスをとるためのサインと言われている。例えば、重い荷物を右手で持ったとき、気がついてみると左手に持ち替えていることがある。これは、右手が「疲れてきた」というサイン(ストレス)を脳に知らせ、それを受けた脳が、体のバランスをとるために、「左手に持ち替えろ」という命令を出しているのである。
心身のどこかに不快なものを感じるなら、それはその部分と他の部分のバランスが悪くなっているのかもしれない。あるいは、心に嫌な感じがわいているのであれば、心と現実社会の間にギャップができているかもしれない。自分のストレス状態を知ったら、それを緩和することが重要だ。 (具体的な対策 略)
ストレスを抱えていては、自分の本来の能力を発揮することはできない。まずは、「小さなストレス」に気づき、自分の「心と体のバランス」、「仕事と家庭のバランス(ワークライフバランス)」を見つめ直してみるといいだろう。