『ストレス解消ハンドブック』(2001年、PHP研究所)のうち一部抜粋
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■ 「テクノ不安症」と「テクノ依存症」の2タイプ
■ 80年代と現在ではテクノロジーの環境が大きく変わった
■ 「スピード化」がテクノストレスの本質
■ 80年代と現在ではテクノロジーの環境が大きく変わった
■ 「スピード化」がテクノストレスの本質
[用語解説] テクノストレス
「テクノストレス」とは、人間がテクノロジーに適応する過程で発生するストレスのことを言う。米国の心理学者クレイグ・ブロードの研究から生まれた言葉。
「テクノストレス」とは、人間がテクノロジーに適応する過程で発生するストレスのことを言う。米国の心理学者クレイグ・ブロードの研究から生まれた言葉。
「テクノ不安症」と「テクノ依存症」の2タイプ
「テクノストレス」というのは、1984年にアメリカの臨床心理学者クレイグ・ブロードが用いた言葉です。彼は、ハイテク業界で働く人や、学校でコンピュータを使っている子供たちなど幅広い層の人を対象に、3年間にわたるインタビュー調査を行ない、その結果、2種類のタイプの人がいるということを発見しました。
一方は、コンピュータになじめないで四苦八苦しているタイプ(テクノ不安症)です。こういう人たちは、絶えず緊張を強いられていて、コンピュータに対して不安や恐れを抱いていました。
もう一方は、コンピュータにのめり込みすぎてしまうタイプ(テクノ依存症)です。こちらの人たちには、コミュニケーションに障害を来したり、思考がイエスかノーの二者択一になったりするという特徴が見られたようです。
80年代と現在ではテクノロジーの環境が大きく変わった
この調査が行なわれた1980年代前半には、アメリカではアップルコンピュータのマックが急速に広がり始めていました。コンピュータ革命がメディアで絶賛され、1982年には権威ある米『タイム』誌のマン・オブ・ザ・イヤーに「コンピュータ」が選ばれたほどです(『タイム』誌へリンク)。
ブロードは、そのような社会に警鐘を鳴らすために、コンピュータの危険性を指摘したのですが、その後、コンピュータ革命はさらに急速に進んでいってしまいました。現在(執筆時:2001年7月)では、当時は普及していなかったインターネット、メール、携帯端末でのネット接続が普及しています。
当時のテクノロジー環境とは状況が一変していますので、『ストレスケア・コム』でも、現代の人々がどのようなテクノストレスを感じているのかということを調査してみました(2001年5月~6月)。 その結果、多くの人が「メールストレス」を感じているということがわかりました。「メール不安」、「メール依存」などブロードの調査した時点とは、テクノストレスの現象面ではかなり変わってきています。
「スピード化」がテクノストレスの本質
テクノロジーの環境は大きく変わりました。しかし、ブロードのすごいところは、テクノロジーがどのような状況になっても共通する本質的なことをきちんと指摘しているということです。それは、「スピード化」です。
当時のコンピュータ利用者も、現代のメール利用者も、「急がされている」ということは共通の特徴といえます。
ブロードは、コンピュータを否定していたわけではありません。コンピュータ化の流れが避けようがないからこそ、コンピュータとうまくつきあっていく必要性を強調したのです。
そのつきあい方としては、自分がコンピュータにのめり込みすぎないように、「もう一人の自分」を持って、自分の精神状態をきちんと観察するとこと、意識的に「気分転換」を図ること、などがあげられています。
(当記事の執筆は2001年です。当時の状況と違いが生じている可能性があることをご了承下さい)