アブセンティーイズム・コストとは?
職場のメンタルヘルスを考える上では、「アブセンティーイズム・コスト」と「プレゼンティーイズム・コスト」という概念が重要になります。
「アブセンティーイズム(absenteeism)」という言葉は、「absence(欠勤)」から来ており、職場を休みがちになったり、長期欠勤したりすることを指します。
心身の調子を崩すと、突然の欠勤や、繰り返しの欠勤、療養のための長期休業などが起こりがちです。こうした欠勤に関連するコストを「アブセンティーイズム・コスト」と言います。
多くの場合、1日当たりの人件費や傷病手当額などをもとに計算されます。主な国の国全体の欠勤コストは下記の通り、膨大な額となっています。
企業レベルでも、病気欠勤コストは軽視できない額となっており、イギリス系企業を中心に欠勤対策が広がっています。
欠勤対策の実施によってロールスロイスは3年で約16億円の節約、アストラゼネカは年約7億円、ロイヤルメールは3年半で約327億円の欠勤コストを節約しています。
(1ドル=93円、1ポンド=144円、1豪ドル=87円で換算)
「アブセンティーイズム(absenteeism)」という言葉は、「absence(欠勤)」から来ており、職場を休みがちになったり、長期欠勤したりすることを指します。
心身の調子を崩すと、突然の欠勤や、繰り返しの欠勤、療養のための長期休業などが起こりがちです。こうした欠勤に関連するコストを「アブセンティーイズム・コスト」と言います。
多くの場合、1日当たりの人件費や傷病手当額などをもとに計算されます。主な国の国全体の欠勤コストは下記の通り、膨大な額となっています。
▼ 米国 6.9兆円(心身の疾患)
▼ 英国 1.2兆円(心の疾患のみ)
▼ 豪州 0.6兆円(心身の疾患)
▼ 英国 1.2兆円(心の疾患のみ)
▼ 豪州 0.6兆円(心身の疾患)
企業レベルでも、病気欠勤コストは軽視できない額となっており、イギリス系企業を中心に欠勤対策が広がっています。
欠勤対策の実施によってロールスロイスは3年で約16億円の節約、アストラゼネカは年約7億円、ロイヤルメールは3年半で約327億円の欠勤コストを節約しています。
(1ドル=93円、1ポンド=144円、1豪ドル=87円で換算)
プレゼンティーイズム・コストとは?
次に、「プレゼンティーイズム・コスト」について見てみましょう。
「プレゼンティーイズム(presenteeism)」という言葉は、「presence(出勤)」に由来し、調子が悪くても、無理して出勤することを言います。病気のときには、仕事の能率が低下しがちですが、能率の低下によって失われた生産性が「プレゼンティーイズム・コスト」です。
次の例で考えてみましょう。
いつもは90%くらいの能力を発揮している人が、心身の調子が悪くなり、集中力や思考力が低下して、70%の能力しか出せなくなったとします。1ヶ月の労働日を20日と仮定して、次のAさんとBさんの対応では、どちらが生産性の損失が大きいでしょうか。
2人の実質労働日数を計算してみると、次のようになります。
意外に思われるかもしれませんが、3日間休んだBさんのほうが、1日も休まずに皆勤したAさんよりも、働いた日数が長いことになるのです。
様々な研究の結果、病気の際には、欠勤による生産性損失よりも、出勤による生産性損失のほうが何倍も大きいことが明らかになっています。
うつ病の場合は、出勤しても、頭がボーッとしていたり、集中できなかったりして仕事が手につかないこともあるため、1.9倍~5.1倍程度、出勤による損失のほうが大きいとされています。
上の図は、アメリカで研究された、代表的な疾患の1人当たりの年間生産性損失額です。
青色がプレゼンティーイズム・コスト(出勤による損失)、オレンジ色がアブセンティーイズム・コスト(欠勤による損失)です。うつ病は左から2番目です。
うつ病は、出勤することによる生産性損失が大きい病気の一つであることがわかります。
「プレゼンティーイズム(presenteeism)」という言葉は、「presence(出勤)」に由来し、調子が悪くても、無理して出勤することを言います。病気のときには、仕事の能率が低下しがちですが、能率の低下によって失われた生産性が「プレゼンティーイズム・コスト」です。
次の例で考えてみましょう。
いつもは90%くらいの能力を発揮している人が、心身の調子が悪くなり、集中力や思考力が低下して、70%の能力しか出せなくなったとします。1ヶ月の労働日を20日と仮定して、次のAさんとBさんの対応では、どちらが生産性の損失が大きいでしょうか。
■Aさん
能率は70%まで落ちているが、毎日出勤して仕事を頑張る
■Bさん
心身の不調を回復させるため、3日間休んで、能率を90%にまで回復させてから、残りの17日間を頑張る
能率は70%まで落ちているが、毎日出勤して仕事を頑張る
■Bさん
心身の不調を回復させるため、3日間休んで、能率を90%にまで回復させてから、残りの17日間を頑張る
2人の実質労働日数を計算してみると、次のようになります。
■Aさん 70%×20日=14.0日
■Bさん 90%×17日=15.3日
■Bさん 90%×17日=15.3日
意外に思われるかもしれませんが、3日間休んだBさんのほうが、1日も休まずに皆勤したAさんよりも、働いた日数が長いことになるのです。
様々な研究の結果、病気の際には、欠勤による生産性損失よりも、出勤による生産性損失のほうが何倍も大きいことが明らかになっています。
うつ病の場合は、出勤しても、頭がボーッとしていたり、集中できなかったりして仕事が手につかないこともあるため、1.9倍~5.1倍程度、出勤による損失のほうが大きいとされています。
上の図は、アメリカで研究された、代表的な疾患の1人当たりの年間生産性損失額です。
青色がプレゼンティーイズム・コスト(出勤による損失)、オレンジ色がアブセンティーイズム・コスト(欠勤による損失)です。うつ病は左から2番目です。
うつ病は、出勤することによる生産性損失が大きい病気の一つであることがわかります。
「見えないコスト」の認識が広がる
出勤による生産性損失は、目に見えないコストであるため、あまり認識されていませんでしたが、2009年の新型インフルエンザ問題を機に経営者や管理職の見方が少し変わってきました。
「感染した社員を出勤させると、健康な社員にも感染し、職場全体の生産性を低下させかねない」という認識が広がり、それまで根強かった「休ませることは会社にとって損失である」という考え方から、「休ませたほうが損失を防げるケースもある」という見方に変わってきたのです。
欠勤は、顧客サービスや、チームワーク、職場の規律にも影響しかねませんから、抑制していかなければならないものです。
しかし、心身の調子の悪い社員を無理に出勤させた場合には、休んでもらうことよりも、何倍も生産性の損失が大きくなることがあります。
職場の生産性を最大限に高めるためには、欠勤を抑制するだけでなく、無理な出勤によって損失が拡大していないかどうかを、よく見極めたマネジメントをすることが重要と言えます。(了)
「感染した社員を出勤させると、健康な社員にも感染し、職場全体の生産性を低下させかねない」という認識が広がり、それまで根強かった「休ませることは会社にとって損失である」という考え方から、「休ませたほうが損失を防げるケースもある」という見方に変わってきたのです。
欠勤は、顧客サービスや、チームワーク、職場の規律にも影響しかねませんから、抑制していかなければならないものです。
しかし、心身の調子の悪い社員を無理に出勤させた場合には、休んでもらうことよりも、何倍も生産性の損失が大きくなることがあります。
職場の生産性を最大限に高めるためには、欠勤を抑制するだけでなく、無理な出勤によって損失が拡大していないかどうかを、よく見極めたマネジメントをすることが重要と言えます。(了)
参考資料
2008年の『アメリカ大統領経済報告』では、アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムは、次のように定義されています。詳しくは、関連記事 アブセンティーイズム、プレゼンティーイズムとは? 心身不調のコスト。
スマホなどでご覧の方は、クリックして、拡大してご覧ください。
今は、閉鎖されてしまいましたが、2010年の世界経済フォーラムのサイトには、従業員の数値を打ち込むと、プレゼンティーイズム・コストとアブセンティーイズム・コストを計算できるページがありました。世界の多くの企業がこのサイトを利用して計算したようです。最終的には、ROI(投資収益率)が出てきます。
ここでは、ストレス・マネジメントを導入した場合のケースのキャプチャー画像を掲載します。ストレス・マネジメントを5年間導入した場合のROI(投資収益率)は、124%~151%と計算されています。
スマホなどでご覧の方は、クリックして、拡大してご覧ください。
2008年の『アメリカ大統領経済報告』では、アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムは、次のように定義されています。詳しくは、関連記事 アブセンティーイズム、プレゼンティーイズムとは? 心身不調のコスト。
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今は、閉鎖されてしまいましたが、2010年の世界経済フォーラムのサイトには、従業員の数値を打ち込むと、プレゼンティーイズム・コストとアブセンティーイズム・コストを計算できるページがありました。世界の多くの企業がこのサイトを利用して計算したようです。最終的には、ROI(投資収益率)が出てきます。
ここでは、ストレス・マネジメントを導入した場合のケースのキャプチャー画像を掲載します。ストレス・マネジメントを5年間導入した場合のROI(投資収益率)は、124%~151%と計算されています。
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