メンタルヘルス対策の2つのアプローチ
メンタルヘルス対策は、大きく2つのアプローチに分けられます。
<ワイド・ターゲット・アプローチ>
広範囲の人(職場においては、すべての役職員)を対象としたアプローチ。過大なストレスが発生するのを防ぎ、不調を予防することを通じて、メンタルヘルスを実現するアプローチ。
<ナロー・ターゲット・アプローチ>
狭い範囲の人を対象としたアプローチ。不調者を早期に発見し、不調者に適切に対応することによって、メンタルヘルスを実現するアプローチ。
職場の管理職は、この両者のアプローチで一定の役割を果たすことが期待されています。
しかしながら、多くの管理職は、業務多忙で、メンタルヘルス上の追加的な業務を課されても、対応する余力がないのが実情のようです。実際、メンタルヘルス対策の進んでいる欧米では、次のような現象が起こりました。
これらの問題を解決するために、現在では、役割分担の考え方が進んでいます。
管理職は、日常業務の中で予防的な「ワイド・ターゲット・アプローチ」を中心に行い、不調者を発見した場合には、いち早く専門家につなぎ、あとは専門家が「ナロー・ターゲット・アプローチ」を引き受ける。
このような役割分担を行えば、管理職の負荷は減り、専門家による早期の適切な対応も可能になります。
<ワイド・ターゲット・アプローチ>
広範囲の人(職場においては、すべての役職員)を対象としたアプローチ。過大なストレスが発生するのを防ぎ、不調を予防することを通じて、メンタルヘルスを実現するアプローチ。
<ナロー・ターゲット・アプローチ>
狭い範囲の人を対象としたアプローチ。不調者を早期に発見し、不調者に適切に対応することによって、メンタルヘルスを実現するアプローチ。
職場の管理職は、この両者のアプローチで一定の役割を果たすことが期待されています。
しかしながら、多くの管理職は、業務多忙で、メンタルヘルス上の追加的な業務を課されても、対応する余力がないのが実情のようです。実際、メンタルヘルス対策の進んでいる欧米では、次のような現象が起こりました。
■管理職に、メンタルヘルス対策の追加業務を課すと、管理職の負荷が高まりすぎる
■管理職が、中途半端な知識で判断すると、かえって不調者のリスクが高くなる
■管理職が、中途半端な知識で判断すると、かえって不調者のリスクが高くなる
これらの問題を解決するために、現在では、役割分担の考え方が進んでいます。
管理職は、日常業務の中で予防的な「ワイド・ターゲット・アプローチ」を中心に行い、不調者を発見した場合には、いち早く専門家につなぎ、あとは専門家が「ナロー・ターゲット・アプローチ」を引き受ける。
このような役割分担を行えば、管理職の負荷は減り、専門家による早期の適切な対応も可能になります。
「マネジメント・スタンダード(MS)」とは?
「ワイド・ターゲット・アプローチ」の中で注目されているのが、イギリス安全衛生庁(HSE)が開発した「マネジメント・スタンダード・アプローチ(MS)」です。
MSは、表で示した6つのポイントに気をつけたマネジメントをするだけで、過大なストレスやうつ状態を予防することができるというものです。
(イギリス安全衛生庁資料をもとに作成)
MSは、過去のメンタルヘルス対策の反省に基づいて開発されています。
かつてのメンタルヘルス対策においては、人事部門や健康管理部門から、現場の管理職に対して「不調者には、こう対応しなさい」、「訴訟を避けるためには、こうしないといけない」などと、押し付け的に、必要な対応を要求することがほとんどでした。
しかし、そのような手法は、現場レベルでは反感を生んでいました。現場の人が反感を持ちながら嫌々取り組んでいては、高い効果が出るはずはありません。教育や研修を積み重ねても効果が出ず、コストだけが嵩んでいくという結果をもたらしたのです。
そこで、現場の管理職に上から押し付けるようなやり方はやめて、管理職が取り組みやすく、管理職がメリットを感じられる方法の開発が進められました。それがMSです。
「ライン・マネージャーのモチベーション」を考慮して開発されたという点で、MSは画期的なものとなりました。
MSは、表で示した6つのポイントに気をつけたマネジメントをするだけで、過大なストレスやうつ状態を予防することができるというものです。
「マネジメント・スタンダード(MS)」
1.ロール
部下に、仕事上の役割やミッションを明確に伝えていますか?
2.ディマンド
部下の仕事の量や、部下への要求が過剰になっていませんか?
3.リレーションシップ
職場内で人間関係の悪化や孤立などは生じていませんか?
4.コントロール
部下のスキルアップを支援したり、部下に一定の裁量権を付与したりしていますか?
5.サポート
部下の仕事を支援していますか?
6.チェンジ
変化が起こっているときに部下を支援していますか?
(イギリス安全衛生庁資料をもとに作成)
MSは、過去のメンタルヘルス対策の反省に基づいて開発されています。
かつてのメンタルヘルス対策においては、人事部門や健康管理部門から、現場の管理職に対して「不調者には、こう対応しなさい」、「訴訟を避けるためには、こうしないといけない」などと、押し付け的に、必要な対応を要求することがほとんどでした。
しかし、そのような手法は、現場レベルでは反感を生んでいました。現場の人が反感を持ちながら嫌々取り組んでいては、高い効果が出るはずはありません。教育や研修を積み重ねても効果が出ず、コストだけが嵩んでいくという結果をもたらしたのです。
そこで、現場の管理職に上から押し付けるようなやり方はやめて、管理職が取り組みやすく、管理職がメリットを感じられる方法の開発が進められました。それがMSです。
「ライン・マネージャーのモチベーション」を考慮して開発されたという点で、MSは画期的なものとなりました。
エビデンスに裏付けられた手法
MSは、多くのエビデンス(科学的根拠)に裏付けられています。
最近の例で言えば、2009年10月にイギリスの医学誌に掲載された研究論文で、MSの6ポイントを実行することが「うつ状態の抑制」「不安の抑制」「満足度の向上」と有意な関連性を持つことが明らかになっています。
また、ビジネスとのつながりに関しても、多くの研究データがあります。MSの6ポイントは、「仕事のパフォーマンス向上」「欠勤の抑制」「離職の抑制」をもたらすこともわかっています。
わかりやすく言えば、MSの6ポイントに気を付けたマネジメントを行うことは、部下の仕事のパフォーマンスを高め、うつ病の抑制も可能にするということです。仮に、うつ病の抑制につながらないとしても、ビジネス上の効果が期待できますから、管理職にとっては損のない手法です。
MSは、多くのイギリス企業が取り入れているほか、カナダ政府やオーストラリア政府も注目をしており、両国ではMSを参考にしながらメンタルヘルス政策が検討されています。
国際的に注目されているこのMSの実践法について、次回から詳しく解説していきます。
最近の例で言えば、2009年10月にイギリスの医学誌に掲載された研究論文で、MSの6ポイントを実行することが「うつ状態の抑制」「不安の抑制」「満足度の向上」と有意な関連性を持つことが明らかになっています。
また、ビジネスとのつながりに関しても、多くの研究データがあります。MSの6ポイントは、「仕事のパフォーマンス向上」「欠勤の抑制」「離職の抑制」をもたらすこともわかっています。
わかりやすく言えば、MSの6ポイントに気を付けたマネジメントを行うことは、部下の仕事のパフォーマンスを高め、うつ病の抑制も可能にするということです。仮に、うつ病の抑制につながらないとしても、ビジネス上の効果が期待できますから、管理職にとっては損のない手法です。
MSは、多くのイギリス企業が取り入れているほか、カナダ政府やオーストラリア政府も注目をしており、両国ではMSを参考にしながらメンタルヘルス政策が検討されています。
国際的に注目されているこのMSの実践法について、次回から詳しく解説していきます。