部下に「負荷のかかる要求」をせざるをえない時代
今回も、引き続き「マネジメント・スタンダード」について考えてみたいと思います。今回ご紹介するのは、「ロール(役割の明確化)」と「サポート(支援)」の2つです。
最近、「ビジネスを取り巻く環境が厳しさを増している」という話をよく聞きます。海外勢との競争が激化し、顧客や取引先からの要望も、ますます厳しくなっているようです。
このような環境下では、職場の誰もが困難な業務や、負荷の高い業務に取り組まざるをえません。
各職場の上司やリーダーは、自分の本意ではないとしても、外部環境が厳しいために、部下に「負荷のかかる要求」をせざるをえないこともあるだろうと思います。
こうした外部環境が今後も続いていくとすれば、上司は部下に対して、いっそう困難な課題や、高いノルマを課さざるをえなくなります。
だとすると、上司に求められているのは、「部下にストレスを乗り越えてもらうためのマネジメント」ではないかと思います。
ここで、少し、ビジネスから離れた世界のことを考えてみましょう。
世の中には、「部下に強いストレスを与えるのが役割」とも言えるような仕事があります。それは、防衛、警察、消防などの組織の指揮官です。
これらの組織の指揮官は、部下に対して、命を失う危険がある場所に赴くように命令せざるをえない場合があります。そのような、危険を伴う、ストレスの高い任務に耐えぬいてもらうときに、不可欠な要素が、今回ご紹介する「ロール」と「サポート」です。
最近、「ビジネスを取り巻く環境が厳しさを増している」という話をよく聞きます。海外勢との競争が激化し、顧客や取引先からの要望も、ますます厳しくなっているようです。
このような環境下では、職場の誰もが困難な業務や、負荷の高い業務に取り組まざるをえません。
各職場の上司やリーダーは、自分の本意ではないとしても、外部環境が厳しいために、部下に「負荷のかかる要求」をせざるをえないこともあるだろうと思います。
こうした外部環境が今後も続いていくとすれば、上司は部下に対して、いっそう困難な課題や、高いノルマを課さざるをえなくなります。
だとすると、上司に求められているのは、「部下にストレスを乗り越えてもらうためのマネジメント」ではないかと思います。
ここで、少し、ビジネスから離れた世界のことを考えてみましょう。
世の中には、「部下に強いストレスを与えるのが役割」とも言えるような仕事があります。それは、防衛、警察、消防などの組織の指揮官です。
これらの組織の指揮官は、部下に対して、命を失う危険がある場所に赴くように命令せざるをえない場合があります。そのような、危険を伴う、ストレスの高い任務に耐えぬいてもらうときに、不可欠な要素が、今回ご紹介する「ロール」と「サポート」です。
ミッションをよく理解してもらうことが大切
欧州と北米の防衛同盟であるNATO(北大西洋条約機構)では、兵士のストレスに対して効果的な支援を行うために、指揮官向けの心理支援ガイドが作られています。そこには、次のような言葉があります。
この一文に、部下にストレスを乗り越えてもらうための大きなヒントがあります。
1つめのポイントは、ミッション(使命)をよく理解してもらい、ロール(役割)を明確にするということです。
軍隊で働く兵士たちは、命を落とす危険があることを覚悟しているかもしれませんが、それでも、意味のない「無駄死に」をしたいとは、誰も思っていないはずです。仮に命を落とすことがあったとしても、それは「国のため」、「仲間のため」だからこそであって、何の意味もない死は、絶対に避けたいでしょう。
「自分は意味があることしている」「価値があることをしている」と思えなければ、命の危険があるほどのストレスに耐え抜こうという気持ちにはなれません。
各兵士に、ミッションの意義と、自分の役割をきちんと理解してもらい、「価値のある仕事の一翼を担っているのだ」と思ってもらうことが必要なのです。
「兵士は、ミッションを理解し、任務の面でも個人的な面でも、リーダーから支援されていると感じるときに、任務の厳しさに耐え抜こうとする」
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この一文に、部下にストレスを乗り越えてもらうための大きなヒントがあります。
1つめのポイントは、ミッション(使命)をよく理解してもらい、ロール(役割)を明確にするということです。
軍隊で働く兵士たちは、命を落とす危険があることを覚悟しているかもしれませんが、それでも、意味のない「無駄死に」をしたいとは、誰も思っていないはずです。仮に命を落とすことがあったとしても、それは「国のため」、「仲間のため」だからこそであって、何の意味もない死は、絶対に避けたいでしょう。
「自分は意味があることしている」「価値があることをしている」と思えなければ、命の危険があるほどのストレスに耐え抜こうという気持ちにはなれません。
各兵士に、ミッションの意義と、自分の役割をきちんと理解してもらい、「価値のある仕事の一翼を担っているのだ」と思ってもらうことが必要なのです。
上司がサポートすることで乗り越えられる
2つ目のポイントは、「サポート(支援)」です。任務に意義を感じてさえいれば過酷な状況に耐え抜けるというものでもありません。
例えば、上官から「敵の中に突っ込め」と命令されたときに、「この任務はとても重要だ。だけど、うちの上官は、いざとなったら私を置いて、逃げてしまうかもしれない」などと、不安に思っていれば、いくら任務に意義を感じていても、突っ込んでいく気にはならないはずです。
反対に、「うちの上官は、必ず後方から自分を守ってくれる。万一、敵に捕まっても、仲間と一緒に必ず救出しに来てくれる」と思っていれば、勇気を持って突き進んでいくこともできます。
任務に意義を感じ、そのうえで「リーダーや仲間から支援してもらっている」と思えたときに、苦しい任務にも耐えられるのです。
例えば、上官から「敵の中に突っ込め」と命令されたときに、「この任務はとても重要だ。だけど、うちの上官は、いざとなったら私を置いて、逃げてしまうかもしれない」などと、不安に思っていれば、いくら任務に意義を感じていても、突っ込んでいく気にはならないはずです。
反対に、「うちの上官は、必ず後方から自分を守ってくれる。万一、敵に捕まっても、仲間と一緒に必ず救出しに来てくれる」と思っていれば、勇気を持って突き進んでいくこともできます。
任務に意義を感じ、そのうえで「リーダーや仲間から支援してもらっている」と思えたときに、苦しい任務にも耐えられるのです。
「ロール」と「サポート」を有効に使う
軍隊という最も過酷な職場の例で説明しましたが、一般の職場でも同じことが言えます。
部下にストレスを乗り越えてもらうには、「会社の製品やサービスが、いかにお客様や社会の役に立っているのか。その中で、自分たちはどの部分の役割を担っているのか」を伝え、「自分たちは、人の役に立つ、価値のある仕事をしているんだ」と思ってもらうことが必要です。
そのうえで、部下に対して課題を与え、取り組んでもらいます。
もし、困難な課題を与えるのであれば、最大限の支援をするのが上司の役割です。トレーニングの場を提供し、仕事がしやすくなるように手助けをし、「何かあれば、いつでも助けるよ」という姿勢を示しておくことが大切です。
「全面的に支援してもらっている」と感じれば、困難な課題に挑戦し、厳しい状況に耐え抜こうという気持ちもわいてきやすくなります。
外部環境の厳しさに負けないためにも、「ロール(ミッション)」と「サポート」の2つの要素を有効に使ったマネジメントを行って、部下に仕事のストレスを乗り越えてもらいましょう。
<追記 2015年> なぜ「ブラック企業」と言われるのか?
「ブラック企業」と呼ばれる企業の中には、社員に「使命」や「意義」や「やりがい」などを伝えている会社もあります。
しかし、人間は意義を感じてさえいれば、モチベーションが高まって一生懸命にやるというわけではありません。
「会社は『意義のある仕事』と言っているのなら、なぜ『意義のある仕事』をしている自分のことを支援しようとしないのだろうか?」と、意義そのものへの疑問がわいてきます。
会社がどれだけ「意義」を強調しても、「支援」が伴わないと、社員は本当の意義を感じられません。「支援」が著しく不足している企業は、「ブラック企業」と呼ばれたり、社員のパフォーマンスが高まらなかったりします。
上記のNATOの心理支援ガイドからもわかるように、「意義」と「支援」はセットになっています。
部下にストレスを乗り越えてもらうには、「会社の製品やサービスが、いかにお客様や社会の役に立っているのか。その中で、自分たちはどの部分の役割を担っているのか」を伝え、「自分たちは、人の役に立つ、価値のある仕事をしているんだ」と思ってもらうことが必要です。
そのうえで、部下に対して課題を与え、取り組んでもらいます。
もし、困難な課題を与えるのであれば、最大限の支援をするのが上司の役割です。トレーニングの場を提供し、仕事がしやすくなるように手助けをし、「何かあれば、いつでも助けるよ」という姿勢を示しておくことが大切です。
「全面的に支援してもらっている」と感じれば、困難な課題に挑戦し、厳しい状況に耐え抜こうという気持ちもわいてきやすくなります。
外部環境の厳しさに負けないためにも、「ロール(ミッション)」と「サポート」の2つの要素を有効に使ったマネジメントを行って、部下に仕事のストレスを乗り越えてもらいましょう。
<追記 2015年> なぜ「ブラック企業」と言われるのか?
「ブラック企業」と呼ばれる企業の中には、社員に「使命」や「意義」や「やりがい」などを伝えている会社もあります。
しかし、人間は意義を感じてさえいれば、モチベーションが高まって一生懸命にやるというわけではありません。
「会社は『意義のある仕事』と言っているのなら、なぜ『意義のある仕事』をしている自分のことを支援しようとしないのだろうか?」と、意義そのものへの疑問がわいてきます。
会社がどれだけ「意義」を強調しても、「支援」が伴わないと、社員は本当の意義を感じられません。「支援」が著しく不足している企業は、「ブラック企業」と呼ばれたり、社員のパフォーマンスが高まらなかったりします。
上記のNATOの心理支援ガイドからもわかるように、「意義」と「支援」はセットになっています。