心の不調を発症した人の中には、療養のために長期間の休職が必要となる人もいます。自分の部下が休職することになった場合に、管理職は、どのように対応すればいいでしょうか。

　ポイントは、休職開始前から、職場復帰を見据えた対応をしておくということです。

　通常は、休職期間が終わると、職場に復帰することになります。しかしながら、職場への復帰は、それほど簡単なことではありません。

　復帰者にとっては、かなりの労力を要することですし、また、受け入れる職場の上司や同僚にとっても、負担のかかるものです。そのため、復帰時にはいくつもの問題が発生することがあります。

　復帰後に、いつまで経っても職務能力が職場の要求水準に戻らなかったり、同僚たちから「職場に貢献していない人」と見なされて孤立してしまったり、病気が再発してしまったりと、様々な問題が出てくることがあります。

　こうしたことがなるべく起こらないようにするためには、休職前からの適切な対応が必要となります。

　休職前に管理職がすべきことは、安心して療養してもらえるように環境整備をすることです。

　重いうつ病になる人の中には、まじめなタイプの人が多く、休職中も仕事のことが気になってしまう人もいます。休職者が担当していた業務や、仕掛かり中の業務を職場内で分担し、「仕事のことは心配しなくていいから、ゆっくり休みなさい」と言って安心して休んでもらうことが大切です。

　療養に専念してもらい、きちんと治してもらうことが、職場復帰の大前提であり、再発の防止のためにも重要となります。

　休職期間中に必要な対応は、定期的に連絡を入れることです。休職期間中に職場からまったく連絡を入れないでいると、職場復帰がうまくいかなくなる可能性が高まってしまうからです。

　例えば、３か月の休職をする場合に、その３か月間に、上司が一度も連絡を入れないとしたら、休職者はどう感じるでしょうか。
　おそらく、「職場が自分を待っていてくれる」、「上司が待っていてくれる」と感じることはできないはずです。

　それどころか、「自分はもう職場には必要のない人間ではないか」、「仕事を失うのではないか」といった不安感が増してくることもあります。

　うつ病という病気は、自己評価が低くなる特徴を持っているとされますから、連絡がないと「自分はもう世の中に必要のない人間かも」と、極端な考え方をする人もいるようです。

　休職した部下との折り合いが悪い場合は別ですが、そうでなければ、部下の不安感や孤立感を取り除き、「職場が待っていてくれる」という希望のようなものを感じてもらうために、定期的に連絡を入れることが必要です。

　連絡を入れた際に、何を言えばいいかわからずに悩む人もいますが、あまり難しく考える必要はありません。

　日本には、「お見舞い」という素晴らしい言葉があります。お見舞いの連絡を入れると考えて下さい。

　体の病気を患って何か月か入院をしている部下がいる場合には、職場の上司は、一度はお見舞いに行くはずです。お見舞いによって、信頼関係がいっそう深まることもあります。心の病気においてもお見舞いは重要なサポートの一つです。

　ただし、心の病気の場合は、自宅療養をすることが多く、自宅にまで出向くと相手の負担になることがありますから、電話連絡が一般的です。電話を入れて、お見舞いの言葉をかけましょう。

　自宅に電話した場合は、家族が電話に出ることが多いはずですから、本人に話す前に「〇〇さんの体調はいかがですか？」と聞いてみるといいでしょう。そのうえで「〇〇さんは電話に出られそうですか？」と聞いて、電話に出たらお見舞いの言葉をかけましょう。


　と話しかけてみて下さい。


　連絡を入れるときに、念頭に置いておかなければいけないのは、心の病気は一直線に回復が進んでいくわけではないという点です。

　何度も連絡を入れていると、相手から「おかげさまで、少しずつ良くなってきました」というような言葉を期待しがちになります。しかしながら、心の病気の場合は、１回目に連絡を入れたときよりも、２回目、３回目に連絡を入れたときのほうが、相手の調子が悪くなっていることもあります。

　あまり過度な期待はしないで、ともかくお見舞いの言葉をかけるつもりで、連絡を入れることが大切です。ときには、「何か困っていることある？」などと聞いてみるのもいいでしょう。

　なお、休職中のサポートの一つとして、休職者と仲の良い同僚からお見舞いの連絡を入れてもらうことも効果的とされています。
　ただし、上司や同僚が頻繁に連絡を入れてしまうと、落ち着いて休めなくなってしまいますので、連絡の頻度については、あまり多くなりすぎないようにしていくことが大切です。

　いずれにしても、休職期間中の支援策として重要なことは、定期的にお見舞いの連絡をすることによって、人間関係を保つことです。

　「みんなが待っていてくれる」、「もう一度あの職場に戻って働きたい」と感じてもらうことが、職場復帰を円滑に進め、復帰後に再び職場に貢献してもらうために、とても重要なことです。