事故を防ぐための認知心理学
仕事をする上では、安全対策・事故予防は重要なテーマの一つです。
いったん事故が起こると当事者・関係者には大きなストレスがかかります。中には事故がトラウマ(心の傷)となって苦しみ続ける人もいます。
安全対策・事故予防は、ある意味で「将来のストレス」を予防する対策とも言えます。
多くの事故には、人間の判断ミスや見間違い、聞き間違いなどが絡んでいます。これらのミスは、脳で起こる情報処理のエラーと捉えることができます。
欧米では、事故予防のために、脳の情報処理の特性を研究した認知心理学の知見が取り入れられています。
認知心理学にはいくつかの分野がありますが、実は日本に古くから伝わっているものとほぼ同じ分類となっています。般若心経などで仏教用語として出てくる「受想行識」です。
脳の情報処理エラーは「受想行識」の4つのどこかの段階で起こっています。
「受」というのは、外部からの情報の受信です。目や耳などの感覚器官から受け取った情報が脳の中に入力されます。
その入力された情報を受けて、外部の世界がどういう状況になっているのかを判断し、評価し、意味づけを行います。何が起こっているのかを想像するのが「想」です。
次に、「想」をもとに、どう対応するかを決めます。何らかの行為(何もしない行為も含めて)を選択するのが「行」です。
こうした一連の「受・想・行」のプロセスとその結果が、知識や意識(無意識)として記憶されます。これが「識」です。
認知心理学との関連でいえば「受」は知覚や注意、「想」は評価・意味づけ、「行」は意思決定、「識」は記憶に相当します。
いったん事故が起こると当事者・関係者には大きなストレスがかかります。中には事故がトラウマ(心の傷)となって苦しみ続ける人もいます。
安全対策・事故予防は、ある意味で「将来のストレス」を予防する対策とも言えます。
多くの事故には、人間の判断ミスや見間違い、聞き間違いなどが絡んでいます。これらのミスは、脳で起こる情報処理のエラーと捉えることができます。
欧米では、事故予防のために、脳の情報処理の特性を研究した認知心理学の知見が取り入れられています。
認知心理学にはいくつかの分野がありますが、実は日本に古くから伝わっているものとほぼ同じ分類となっています。般若心経などで仏教用語として出てくる「受想行識」です。
脳の情報処理エラーは「受想行識」の4つのどこかの段階で起こっています。
「受」というのは、外部からの情報の受信です。目や耳などの感覚器官から受け取った情報が脳の中に入力されます。
その入力された情報を受けて、外部の世界がどういう状況になっているのかを判断し、評価し、意味づけを行います。何が起こっているのかを想像するのが「想」です。
次に、「想」をもとに、どう対応するかを決めます。何らかの行為(何もしない行為も含めて)を選択するのが「行」です。
こうした一連の「受・想・行」のプロセスとその結果が、知識や意識(無意識)として記憶されます。これが「識」です。
認知心理学との関連でいえば「受」は知覚や注意、「想」は評価・意味づけ、「行」は意思決定、「識」は記憶に相当します。
情報を得られないとミスが起こる
「受想行識」の4つのプロセスのどこかでエラーが起こると事故につながりやすくなります。特に「受(受信エラー)」と「想(想像エラー)」が事故予防のポイントです。
受信エラーは、見えにくい状況や聞こえにくい状況のときによく起こります。
史上最悪の航空機事故と言われるテネリフェ空港での事故は、濃い霧で前が見えにくい中で2機の旅客機が衝突し583名が亡くなりました。通信状況も悪く、管制官とパイロットの交信が聞き取りにくい状況も重なっていました。
危険や事故を防ぐには、見えにくい状況や聞こえにくい状況を減らすことです。重要なものは目立たせ、警告表示を見えやすくする、照明をつける、聞き取りやすい連絡手段を使用することなどが挙げられます。
人間のもう1つの特徴として、視界に映っているのに認知できないという場合があります。
「目の前にあるのに見えなかった」という経験は誰しもあるのではないかと思います。人間の脳は注意を向けていないものは受け取ってくれません。見落としや聞き漏らしを防ぐには、注意力を低下させる睡眠不足などをできるだけ避ける必要があります。
受信エラーは、見えにくい状況や聞こえにくい状況のときによく起こります。
史上最悪の航空機事故と言われるテネリフェ空港での事故は、濃い霧で前が見えにくい中で2機の旅客機が衝突し583名が亡くなりました。通信状況も悪く、管制官とパイロットの交信が聞き取りにくい状況も重なっていました。
危険や事故を防ぐには、見えにくい状況や聞こえにくい状況を減らすことです。重要なものは目立たせ、警告表示を見えやすくする、照明をつける、聞き取りやすい連絡手段を使用することなどが挙げられます。
人間のもう1つの特徴として、視界に映っているのに認知できないという場合があります。
「目の前にあるのに見えなかった」という経験は誰しもあるのではないかと思います。人間の脳は注意を向けていないものは受け取ってくれません。見落としや聞き漏らしを防ぐには、注意力を低下させる睡眠不足などをできるだけ避ける必要があります。
思い込みが「状況判断のミス」を生む
脳が外部情報を受け取ると「想」の段階に入ります。このときに、強い思い込みがあると外部からの情報を正しく評価・判断できなくなり、状況判断のミスを生みます。
第二次世界大戦のとき、ソ連のスターリンは「ドイツが侵入してくる恐れがある」という情報を何回も受け取っていたのに、確たる対応をとりませんでした。「そんなことがあるはずがない」と思っていたので、ドイツの侵入を想像できなかったようです。
世の中の大きな事故や事件には「想像力の欠如」が関係していると見られています。米911テロの調査報告書でも、福島原発事故の国会事故調査委員会報告書でも、想像力の欠如が一因と指摘されています。
想像していない予期せぬことが起こると、人間は不安や焦りやストレスを感じて、その影響で脳の情報処理が混乱します。「サプライズ(予期せぬことへの驚き)」が大きいほど、混乱してエラーを生みやすくなります
いざというときに対処できるようにするには、思考訓練のつもりで、いろいろな事態を想像しておき、少しでも「サプライズ」を小さくすることです。
今はインターネットや書籍で様々な事故の調査報告書を読むことができます。また、映画化・DVD化されている事故もあります。
本を読んだり、DVDを見たりしながら「自分の仕事に関係するとしたら、どんなリスクがあるだろう?」と空想してみることも、事故防止のための想像力を高めてくれます。
第二次世界大戦のとき、ソ連のスターリンは「ドイツが侵入してくる恐れがある」という情報を何回も受け取っていたのに、確たる対応をとりませんでした。「そんなことがあるはずがない」と思っていたので、ドイツの侵入を想像できなかったようです。
世の中の大きな事故や事件には「想像力の欠如」が関係していると見られています。米911テロの調査報告書でも、福島原発事故の国会事故調査委員会報告書でも、想像力の欠如が一因と指摘されています。
想像していない予期せぬことが起こると、人間は不安や焦りやストレスを感じて、その影響で脳の情報処理が混乱します。「サプライズ(予期せぬことへの驚き)」が大きいほど、混乱してエラーを生みやすくなります
いざというときに対処できるようにするには、思考訓練のつもりで、いろいろな事態を想像しておき、少しでも「サプライズ」を小さくすることです。
今はインターネットや書籍で様々な事故の調査報告書を読むことができます。また、映画化・DVD化されている事故もあります。
本を読んだり、DVDを見たりしながら「自分の仕事に関係するとしたら、どんなリスクがあるだろう?」と空想してみることも、事故防止のための想像力を高めてくれます。
「4つの視点」でリスク・チェック!
4つの視点で、事故の原因となるエラーが起こるリスクをチェックしてみましょう。
1.受(受信)
■ 見えにくい状況がある
■ 聞こえにくい状況がある
■ 睡眠不足である
■ 気をとられていることがある
2.想(想像)
■ 予期せぬことが起こっている
■ 「そんなことはありえない」という気持ちがわいてくる
3.行(行動選択)
■ 行動の選択肢を1つしか考えていない
■ その選択肢をとった場合に先行きどうなるか想像していない
4.識(知識・意識)
■ 一定以上の安全知識を身につけていない
■ 過去のミス事例を忘れてしまっている
1番の4項目は要注意です。1つでもあるとミスが発生する確率が高くなります。2番、3番、4番の6項目は、発生したミスが拡大し事態を大きくしてしまう要因となります。
1.受(受信)
■ 見えにくい状況がある
■ 聞こえにくい状況がある
■ 睡眠不足である
■ 気をとられていることがある
2.想(想像)
■ 予期せぬことが起こっている
■ 「そんなことはありえない」という気持ちがわいてくる
3.行(行動選択)
■ 行動の選択肢を1つしか考えていない
■ その選択肢をとった場合に先行きどうなるか想像していない
4.識(知識・意識)
■ 一定以上の安全知識を身につけていない
■ 過去のミス事例を忘れてしまっている
1番の4項目は要注意です。1つでもあるとミスが発生する確率が高くなります。2番、3番、4番の6項目は、発生したミスが拡大し事態を大きくしてしまう要因となります。