心理要因でミッションが止まる
最近は、アニメ『宇宙兄弟』などの人気もあり、宇宙への関心が高まっています。宇宙分野には「宇宙心理学」というものがあり、ストレス面を含めた様々な研究が行われています。ビジネスに使えそうな知見もありますので、今回はそれを見ていきます。
1960年代頃の初期の宇宙開発においては、技術面の開発が中心で、心理面にはほとんど関心が向けられていませんでした。
ところが、70年代頃からいくつもの予期せぬ事態が発生し始めました。
アメリカでは、NASAの宇宙飛行士が、過密なスケジュールに腹を立て、宇宙ステーション内で丸一日ストライキをするという出来事がありました。地上管制官の指示をまったく聞かず、ミッションは完全にストップしました。
ソ連では、宇宙ステーションの飛行士が突然「どうしても地球に帰りたい」という気持ちになり、予定ミッションを短縮して戻ってくるという出来事がありました。
米ソともテクノロジーは世界最先端を競っていましたが、「有人ミッションである」ということがあまり意識されておらず、人的側面(ヒューマン・ファクター)がおろそかにされていたのです。
いくつかの出来事を経て、「心理面を軽視すると、ミッションは成功しない」という認識が広がり始めました。
80年代に入ると、アメリカでは「スペースシャトル」の開発に力が入れられたため、1週間程度の短期のミッションが増え、心理的問題はあまり出て来なくなりました。
一方、宇宙ステーション「ミール」に力を入れたソ連は、長期滞在が増えたためか、いくつもの心理的トラブルが発生しました。それに対処するために、ソ連では宇宙心理が真剣に研究されるようになりました。
こうした経緯から、宇宙心理学はソ連の研究が発祥とされ、NASAは10年ほど遅れをとったと言われています。
90年代に「ミール」に「スペースシャトル」がドッキングし、アメリカの飛行士の滞在期間は長期化しました。それ以降、アメリカも宇宙心理学の研究に力を入れ、ソ連(ロシア)とともに研究が盛んになりました。
1960年代頃の初期の宇宙開発においては、技術面の開発が中心で、心理面にはほとんど関心が向けられていませんでした。
ところが、70年代頃からいくつもの予期せぬ事態が発生し始めました。
アメリカでは、NASAの宇宙飛行士が、過密なスケジュールに腹を立て、宇宙ステーション内で丸一日ストライキをするという出来事がありました。地上管制官の指示をまったく聞かず、ミッションは完全にストップしました。
ソ連では、宇宙ステーションの飛行士が突然「どうしても地球に帰りたい」という気持ちになり、予定ミッションを短縮して戻ってくるという出来事がありました。
米ソともテクノロジーは世界最先端を競っていましたが、「有人ミッションである」ということがあまり意識されておらず、人的側面(ヒューマン・ファクター)がおろそかにされていたのです。
いくつかの出来事を経て、「心理面を軽視すると、ミッションは成功しない」という認識が広がり始めました。
80年代に入ると、アメリカでは「スペースシャトル」の開発に力が入れられたため、1週間程度の短期のミッションが増え、心理的問題はあまり出て来なくなりました。
一方、宇宙ステーション「ミール」に力を入れたソ連は、長期滞在が増えたためか、いくつもの心理的トラブルが発生しました。それに対処するために、ソ連では宇宙心理が真剣に研究されるようになりました。
こうした経緯から、宇宙心理学はソ連の研究が発祥とされ、NASAは10年ほど遅れをとったと言われています。
90年代に「ミール」に「スペースシャトル」がドッキングし、アメリカの飛行士の滞在期間は長期化しました。それ以降、アメリカも宇宙心理学の研究に力を入れ、ソ連(ロシア)とともに研究が盛んになりました。
採用時にストレスのことを聞く
宇宙ミッションで一番求められているのは、「ストレス環境の中で仕事ができる能力」と「感情の安定性」とされます。
宇宙飛行士の選抜の詳細は非公開とされていますが、いくつか漏れてきているものによれば、採用段階で心理担当者がストレスについての質問を加えて、選抜の参考にしているようです。
この手法は企業においても参考になるはずです。
たとえば、採用面接の場で「今までで一番ストレスを感じたときのことを教えて下さい。そのときに、あなたはどう対応しましたか?」といった質問をするのです。
その答えを聞けば、ストレス対応能力についてのある程度の推測が付きます。捉え方を変えてみた、対処法を持っている、という人は、一定の対応力があると見ていいでしょう。
ストレス耐性を試そうとして圧迫面接のようなリスクのあることをしなくても、直接的に「ストレスについてどう考えているか」を聞けば判断材料を得られるはずです。
宇宙飛行士の選抜の詳細は非公開とされていますが、いくつか漏れてきているものによれば、採用段階で心理担当者がストレスについての質問を加えて、選抜の参考にしているようです。
この手法は企業においても参考になるはずです。
たとえば、採用面接の場で「今までで一番ストレスを感じたときのことを教えて下さい。そのときに、あなたはどう対応しましたか?」といった質問をするのです。
その答えを聞けば、ストレス対応能力についてのある程度の推測が付きます。捉え方を変えてみた、対処法を持っている、という人は、一定の対応力があると見ていいでしょう。
ストレス耐性を試そうとして圧迫面接のようなリスクのあることをしなくても、直接的に「ストレスについてどう考えているか」を聞けば判断材料を得られるはずです。
プロジェクト後半は感情配慮に変える
プロジェクト管理においても、宇宙からの知見で役に立つものがあります。
宇宙では短期ミッションでは心理的問題はそれほど発生せず、長期ミッションになると心理的問題が発生しやすくなることから、ミッションの前半では「目的中心」のリーダーシップ、ミッションの後半からは「感情配慮」のリーダーシップに変更することが良いと考えられています。プロジェクトの後半に入ったら心理面をより重視したマネジメントに変更するということです。
これは企業の新人研修などでも重要な点です。
現実問題として、研修の後半になると、うつ病になる人が出たり、不祥事が起こったりと、様々な問題が発生しています。
数か月の集中的な新人研修の場合には、前半はスキルや知識を覚えさせるための厳しい指導をしたとしても、後半は、より心理面に配慮した指導に変えていかないと、トラブル発生の可能性が高まります。プロジェクトの前後半でマネジメントを意図的に変化させるというのが宇宙心理学から学べる重要な知見です。
宇宙心理学は、必ずしも画期的な発見を期待できる分野ではありません。しかし、地上では「当たり前」になっていて忘れられている条件に気づかせてくれる大きなメリットを持っています。
私たちが一番忘れがちなことは、仕事はみな「有人ミッション」であるということ。心理面や疲労などの人的要素を軽視すると、ミッションやプロジェクトは計画通りに進まなくなることがあります。
宇宙では短期ミッションでは心理的問題はそれほど発生せず、長期ミッションになると心理的問題が発生しやすくなることから、ミッションの前半では「目的中心」のリーダーシップ、ミッションの後半からは「感情配慮」のリーダーシップに変更することが良いと考えられています。プロジェクトの後半に入ったら心理面をより重視したマネジメントに変更するということです。
これは企業の新人研修などでも重要な点です。
現実問題として、研修の後半になると、うつ病になる人が出たり、不祥事が起こったりと、様々な問題が発生しています。
数か月の集中的な新人研修の場合には、前半はスキルや知識を覚えさせるための厳しい指導をしたとしても、後半は、より心理面に配慮した指導に変えていかないと、トラブル発生の可能性が高まります。プロジェクトの前後半でマネジメントを意図的に変化させるというのが宇宙心理学から学べる重要な知見です。
宇宙心理学は、必ずしも画期的な発見を期待できる分野ではありません。しかし、地上では「当たり前」になっていて忘れられている条件に気づかせてくれる大きなメリットを持っています。
私たちが一番忘れがちなことは、仕事はみな「有人ミッション」であるということ。心理面や疲労などの人的要素を軽視すると、ミッションやプロジェクトは計画通りに進まなくなることがあります。
小さな子を買い物に連れていくには?
プロジェクトの前後半でマネジメントを変えるためには、小さな子をショッピングモールに連れていくことをイメージすると良いとされています。
子供をショッピングに連れていった場合、最初のうちは子供は大人に付いていきます。
しかし、買い物時間が長くなってくると、だんだん子供はぐずりだします。このときに、「まだ、これも買っていない。あれも買っていない」と考えて、「目的志向」で動こうとすると、子供は言うことを聞かなくなります。
ショッピングの後半に入ったら、子供の気持ちにより配慮した「感情志向」の対応に変えたほうが、子供がだだをこねるといったことが減って、結果的に余計な労力や時間をとられずにすむはずです。
プロジェクト管理や教育研修もそれと似ていて、後半の段階では、感情面への配慮を少しずつ高めていかないと、思わぬトラブルや遅れにつながってしまう可能性があります。
子供をショッピングに連れていった場合、最初のうちは子供は大人に付いていきます。
しかし、買い物時間が長くなってくると、だんだん子供はぐずりだします。このときに、「まだ、これも買っていない。あれも買っていない」と考えて、「目的志向」で動こうとすると、子供は言うことを聞かなくなります。
ショッピングの後半に入ったら、子供の気持ちにより配慮した「感情志向」の対応に変えたほうが、子供がだだをこねるといったことが減って、結果的に余計な労力や時間をとられずにすむはずです。
プロジェクト管理や教育研修もそれと似ていて、後半の段階では、感情面への配慮を少しずつ高めていかないと、思わぬトラブルや遅れにつながってしまう可能性があります。