50名以上の事業場で義務化される
企業の人事総務部門にとっては、今年は準備をしておかなければならないことがあります(原稿執筆時点:2015年1月)。
労働安全衛生法が改正され、従業員50名以上の事業場には、ストレスチェックの実施が義務付けられることになりました。2015年12月に施行予定となっています。なお、従業員50名未満の事業場も、努力義務が課されています。
具体的な実施内容に関しては、順次、厚生労働省から情報が公表されますから、同省ホームページなどで概要を確認されておくと良いと思います。
この制度は、法案審議過程から様々な問題点が指摘されていましたので、実施初年度にはかなりの混乱が生ずることも予想されます。初めから万全の対策をとろうとするよりも、手探りで徐々に質を高めていくのが現実的です。
人事担当の方は、仕事の負担が増えて大変だと思いますが、義務化された以上、やらないわけにはいきませんので、苦労に見合うように、少しでも多くのメリットを得ることを考えることが良いのではないかと思います。
労働安全衛生法が改正され、従業員50名以上の事業場には、ストレスチェックの実施が義務付けられることになりました。2015年12月に施行予定となっています。なお、従業員50名未満の事業場も、努力義務が課されています。
具体的な実施内容に関しては、順次、厚生労働省から情報が公表されますから、同省ホームページなどで概要を確認されておくと良いと思います。
この制度は、法案審議過程から様々な問題点が指摘されていましたので、実施初年度にはかなりの混乱が生ずることも予想されます。初めから万全の対策をとろうとするよりも、手探りで徐々に質を高めていくのが現実的です。
人事担当の方は、仕事の負担が増えて大変だと思いますが、義務化された以上、やらないわけにはいきませんので、苦労に見合うように、少しでも多くのメリットを得ることを考えることが良いのではないかと思います。
ストレスは健康にも安全にも影響する
この制度を企業の利益に結びつけるためには、少し広い視点から捉え直してみることが重要です。
まず制度自体の目的を見ておきますと、この制度は、メンタルヘルス不調の予防を主な目的としており、労働者の「ストレスへの気づき」と、企業の「職場環境の改善」が重要とされています。
ただ、こうしたメンタルヘルス上の目的が実現されたとしても、企業側の実感としては、利益に結びつくという感じはしないだろうと思います。
ストレスは、心身の不調だけでなく、作業の安全にも影響を及ぼしますので、「メンタルヘルス」に限定せずに、「安全面」も含めて考えてみてはどうでしょうか。
もともと、日本でストレス対策の先駆けとなった企業には製造業が多く、初めは工場の安全対策の一環としてストレス対策が行われていました。
その後、機械のハイテク化などで工場の安全性は飛躍的に高まったため、「安全」から「健康」にウェイトが移っていきました。しかし、機械の安全性が高まったからといって、ストレスが安全に及ぼす影響がなくなったわけではありません。
業種によっては、「ストレスの健康への影響」を社員に伝えるよりも、「ストレスの安全への影響」を社員に伝えたほうが理解してもらいやすい場合があります。
「労働安全衛生」という言葉からわかるように、安全も衛生もどちらも重要であり、ウェイトの置き方は企業ごとに差があっていいと思います。
まず制度自体の目的を見ておきますと、この制度は、メンタルヘルス不調の予防を主な目的としており、労働者の「ストレスへの気づき」と、企業の「職場環境の改善」が重要とされています。
ただ、こうしたメンタルヘルス上の目的が実現されたとしても、企業側の実感としては、利益に結びつくという感じはしないだろうと思います。
ストレスは、心身の不調だけでなく、作業の安全にも影響を及ぼしますので、「メンタルヘルス」に限定せずに、「安全面」も含めて考えてみてはどうでしょうか。
もともと、日本でストレス対策の先駆けとなった企業には製造業が多く、初めは工場の安全対策の一環としてストレス対策が行われていました。
その後、機械のハイテク化などで工場の安全性は飛躍的に高まったため、「安全」から「健康」にウェイトが移っていきました。しかし、機械の安全性が高まったからといって、ストレスが安全に及ぼす影響がなくなったわけではありません。
業種によっては、「ストレスの健康への影響」を社員に伝えるよりも、「ストレスの安全への影響」を社員に伝えたほうが理解してもらいやすい場合があります。
「労働安全衛生」という言葉からわかるように、安全も衛生もどちらも重要であり、ウェイトの置き方は企業ごとに差があっていいと思います。
ヒューマン・ファクターの中の位置づけ
安全衛生に影響を及ぼすのは、ストレスだけではありません。睡眠不足や疲労も大きな影響を及ぼします。それらの要素も含めて、いずれもヒューマン・ファクター(人的要因)と呼ばれているものです。
大きな枠組みでいえば、「ヒューマン・ファクターは安全と健康に影響を及ぼす」のであり、その中の1つに、ストレスの影響があります。そういう大きな枠組みの中にストレスチェック制度を位置づけて、直接効果と派生効果の両方を狙ってはどうでしょうか。
「メンタルヘルスの効果があったかどうかはわからないけど、ストレスチェックをきっかけに社員の安全意識が高まった」とか「社員が睡眠不足に気をつけるようになってエラーが減った」といった効果でも良いのではないかと思います。
各ヒューマン・ファクターは連動していますので、1つのファクターへの意識が高まれば、何らかの形でメンタルヘルスにも好影響を及ぼすはずです。
国のつくる法律は、あらゆる業界を対象としているため一律のものとなりがちです。しかし、メンタルヘルス不調者にしても、傷病者にしても、業界や企業ごとに発症率は異なります。
国の制度に企業の側が合わせていくことはもちろん必要ですが、その一方で、自社の状況に合わせて制度をカスタマイズして利用するしたたかさも必要です。利益に結びつくかどうかは、制度の趣旨から外れない範囲内で、自社の状況に合わせて、いかにカスタマイズできるかにかかっています。
カギを握っているのは、社員の理解です。社員に伝えるときに、どこにウェイトを置いて伝えると理解してもらいやすいかを検討されるとよいでしょう。
ストレスチェック制度をきっかけにヒューマン・ファクター全体に対する意識を高めてもらえば、結果的に健康にも安全にも良い影響を及ぼすはずです。
大きな枠組みでいえば、「ヒューマン・ファクターは安全と健康に影響を及ぼす」のであり、その中の1つに、ストレスの影響があります。そういう大きな枠組みの中にストレスチェック制度を位置づけて、直接効果と派生効果の両方を狙ってはどうでしょうか。
「メンタルヘルスの効果があったかどうかはわからないけど、ストレスチェックをきっかけに社員の安全意識が高まった」とか「社員が睡眠不足に気をつけるようになってエラーが減った」といった効果でも良いのではないかと思います。
各ヒューマン・ファクターは連動していますので、1つのファクターへの意識が高まれば、何らかの形でメンタルヘルスにも好影響を及ぼすはずです。
国のつくる法律は、あらゆる業界を対象としているため一律のものとなりがちです。しかし、メンタルヘルス不調者にしても、傷病者にしても、業界や企業ごとに発症率は異なります。
国の制度に企業の側が合わせていくことはもちろん必要ですが、その一方で、自社の状況に合わせて制度をカスタマイズして利用するしたたかさも必要です。利益に結びつくかどうかは、制度の趣旨から外れない範囲内で、自社の状況に合わせて、いかにカスタマイズできるかにかかっています。
カギを握っているのは、社員の理解です。社員に伝えるときに、どこにウェイトを置いて伝えると理解してもらいやすいかを検討されるとよいでしょう。
ストレスチェック制度をきっかけにヒューマン・ファクター全体に対する意識を高めてもらえば、結果的に健康にも安全にも良い影響を及ぼすはずです。
ヒューマン・ファクターの影響は?
安全面、健康面への影響を整理すると、次のようなものがあります。
<安全面>
■ ストレスは視野や注意力を狭くする(見落とし・聞き逃しが起こる)
■ ストレスは脳の情報処理能力を低下させる(状況判断を誤る、決められなくなる)
■ ストレスで手先の微細な動きが鈍る(繊細な作業で誤操作や失敗が起こりやすい)
■ 17時間以上起きていると疲労で注意力が低下する(ほろ酔い状態と同程度に)
■ 体調には日内リズムがある(個人差があるが夜明け前の作業はエラーが起こりやすい)
<健康面>
■ 過度なストレスから、うつ状態や心臓疾患につながることがある
■ ストレスは免疫力を下げ、風邪などにかかりやすくなる
<安全面>
■ ストレスは視野や注意力を狭くする(見落とし・聞き逃しが起こる)
■ ストレスは脳の情報処理能力を低下させる(状況判断を誤る、決められなくなる)
■ ストレスで手先の微細な動きが鈍る(繊細な作業で誤操作や失敗が起こりやすい)
■ 17時間以上起きていると疲労で注意力が低下する(ほろ酔い状態と同程度に)
■ 体調には日内リズムがある(個人差があるが夜明け前の作業はエラーが起こりやすい)
<健康面>
■ 過度なストレスから、うつ状態や心臓疾患につながることがある
■ ストレスは免疫力を下げ、風邪などにかかりやすくなる