「徹夜明け」の状態でパリまで飛んだ
1927年5月21日、リンドバーグは世界で初めて、ニューヨークからパリまでの無着陸横断飛行に成功しました。連続33時間以上を一人で操縦し続けた、航空史に残る偉業でした。
ヒューマン・ファクター(人的要因)の観点から見ますと、リンドバーグのすごさは、「睡魔に打ち克って、長時間にわたり能力を保ち続けた」点にあります。
実は、リンドバーグは出発の前日に一睡もできず、徹夜開けの状態で飛行機に乗り込んでいました。そこから33時間眠らずに操縦し続けたのです。
リンドバーグの著書『翼よ、あれがパリの灯だ』(恒文社刊、佐藤亮一訳)には、1時間ごとの飛行記録が載っていますが、同書は睡魔との戦いの言葉で埋め尽くされています。
■「数秒間でもよいから、まどろむことができたら」(4時間目)
■「自然に目を閉じるのをどうすることもできない」(9時間目)
■「いまこの世でいちばん私がほしいものは、からだを平らに投げ出し、手足を伸ばし、そして眠ることだ」(18時間目)
■「だめだ! いけないんだ、私はからだを横にして眠るわけにはいかないんだ! できないんだ!」(20時間目)
当時の飛行機は、パイロットが眠ったら操縦不能になって墜落します。眠気と戦いながら適切な操縦を保ち続けて、長時間飛行を成功させたことが偉業と言われるゆえんです。
ヒューマン・ファクター(人的要因)の観点から見ますと、リンドバーグのすごさは、「睡魔に打ち克って、長時間にわたり能力を保ち続けた」点にあります。
実は、リンドバーグは出発の前日に一睡もできず、徹夜開けの状態で飛行機に乗り込んでいました。そこから33時間眠らずに操縦し続けたのです。
リンドバーグの著書『翼よ、あれがパリの灯だ』(恒文社刊、佐藤亮一訳)には、1時間ごとの飛行記録が載っていますが、同書は睡魔との戦いの言葉で埋め尽くされています。
■「数秒間でもよいから、まどろむことができたら」(4時間目)
■「自然に目を閉じるのをどうすることもできない」(9時間目)
■「いまこの世でいちばん私がほしいものは、からだを平らに投げ出し、手足を伸ばし、そして眠ることだ」(18時間目)
■「だめだ! いけないんだ、私はからだを横にして眠るわけにはいかないんだ! できないんだ!」(20時間目)
当時の飛行機は、パイロットが眠ったら操縦不能になって墜落します。眠気と戦いながら適切な操縦を保ち続けて、長時間飛行を成功させたことが偉業と言われるゆえんです。
睡眠不足だと、足し算すらできなくなる
リンドバーグは、飛行機の操縦には「操縦術」と「判断力」の2つが重要としています。
このうち、操縦術のほうは、リンドバーグには卓越したスキルがありましたから、眠気が襲ってきてもそれほど低下することはありませんでした。しかし、判断力のほうは、睡眠不足によって著しく低下しました。
当時の飛行機にはナビゲーション装置はなく、飛行機の位置を特定するには、速度と時間を掛け合わせ、風速を加味して距離を計算する必要がありました。計算を間違えると、目的地パリにたどり着けないばかりか、海上でさまようことになり、死に直結する可能性が高くなります。
計算力を保つことが重要であるにもかかわらず、リンドバーグは睡眠不足で頭が働かず、単純な計算すらままならない状態でした。それでも何とか頭の働きを保ち続けたことによって、判断力を失わず、パリまで辿り着くことができました。
このリンドバーグの経験は、私たちに重要な示唆を与えてくれます。
パイロットの仕事に限らず、どんな仕事も「スキル」と「判断力」の2つで成り立っています。
ベテランの人の場合は、「スキル」のほうは習熟度が高いですから、睡眠不足でもそれほど影響することはないでしょう。しかし、「判断力」は、どんなに経験豊富な人でも睡眠不足によってかなりの影響を受けます。
自動車の運転を考えてもらうとわかりやすいかもしれません。睡眠不足で運転するときでも、ブレーキを踏むことくらいはできるものです。
しかし、睡眠不足のときには、判断が遅れて、ブレーキを踏むのが遅れる可能性が出てきます。「スキル」の低下よりも「判断力」の低下が事故を生む要因となります。
このうち、操縦術のほうは、リンドバーグには卓越したスキルがありましたから、眠気が襲ってきてもそれほど低下することはありませんでした。しかし、判断力のほうは、睡眠不足によって著しく低下しました。
当時の飛行機にはナビゲーション装置はなく、飛行機の位置を特定するには、速度と時間を掛け合わせ、風速を加味して距離を計算する必要がありました。計算を間違えると、目的地パリにたどり着けないばかりか、海上でさまようことになり、死に直結する可能性が高くなります。
計算力を保つことが重要であるにもかかわらず、リンドバーグは睡眠不足で頭が働かず、単純な計算すらままならない状態でした。それでも何とか頭の働きを保ち続けたことによって、判断力を失わず、パリまで辿り着くことができました。
このリンドバーグの経験は、私たちに重要な示唆を与えてくれます。
パイロットの仕事に限らず、どんな仕事も「スキル」と「判断力」の2つで成り立っています。
ベテランの人の場合は、「スキル」のほうは習熟度が高いですから、睡眠不足でもそれほど影響することはないでしょう。しかし、「判断力」は、どんなに経験豊富な人でも睡眠不足によってかなりの影響を受けます。
自動車の運転を考えてもらうとわかりやすいかもしれません。睡眠不足で運転するときでも、ブレーキを踏むことくらいはできるものです。
しかし、睡眠不足のときには、判断が遅れて、ブレーキを踏むのが遅れる可能性が出てきます。「スキル」の低下よりも「判断力」の低下が事故を生む要因となります。
睡眠不足は、「頭」、「目」、「体」に影響
アメリカで、死亡者発生または100万ドル以上の経済損失を出した24年分の空軍事故が分析されたところ、事故の60%は「睡眠不足」と関係していました。睡眠は安全のために一番大切な要素であることが少しずつ明らかになっています。
アメリカ陸軍の「ストレス・コントロール・マニュアル」には、
1 指揮官
2 見張り
3 一般兵士
の順に睡眠が必要と書かれています。
仕事の種類に分けるならば、
1 頭を使う仕事
2 目を使う仕事
3 体を使う仕事
を意味しています。
指揮官の仕事は、判断が主体であり、頭を使う仕事です。睡眠不足のときには頭が働かなくなり、判断力が著しく低下します。
見張りの仕事は、主に目を使う仕事です。眠いと、目を開けていられなくなり、重要な情報を見落としてしまいがちです。
一般兵士は、主に体を使う仕事をします。体の動きも睡眠不足の影響を受けます。
さて、みなさんの仕事は、「頭」、「目」、「体」のどれをより多く使う仕事でしょうか。もし、「頭」や「目」を多く使う仕事であれば、睡眠を特に大切にする必要があります。
最近のリーダーシップ研究では「スリープ・リーダーシップ」という概念も出てきています。自分の睡眠だけでなく、部下の睡眠もマネジメントできるリーダーが優れたリーダーという認識になってきています。
アメリカ陸軍の「ストレス・コントロール・マニュアル」には、
1 指揮官
2 見張り
3 一般兵士
の順に睡眠が必要と書かれています。
仕事の種類に分けるならば、
1 頭を使う仕事
2 目を使う仕事
3 体を使う仕事
を意味しています。
指揮官の仕事は、判断が主体であり、頭を使う仕事です。睡眠不足のときには頭が働かなくなり、判断力が著しく低下します。
見張りの仕事は、主に目を使う仕事です。眠いと、目を開けていられなくなり、重要な情報を見落としてしまいがちです。
一般兵士は、主に体を使う仕事をします。体の動きも睡眠不足の影響を受けます。
さて、みなさんの仕事は、「頭」、「目」、「体」のどれをより多く使う仕事でしょうか。もし、「頭」や「目」を多く使う仕事であれば、睡眠を特に大切にする必要があります。
最近のリーダーシップ研究では「スリープ・リーダーシップ」という概念も出てきています。自分の睡眠だけでなく、部下の睡眠もマネジメントできるリーダーが優れたリーダーという認識になってきています。
まとめ (Lessons Learned 教訓)
■ 「スキル」と「判断力」の2つが安全に影響する
■ 睡眠不足のときでも、習熟度の高い「スキル」は、それほど影響を受けない
■ 睡眠不足のときには、「判断力」は著しく低下する
■ 「頭を使う仕事」「目を使う仕事」「体を使う仕事」の順に睡眠が大切
■ 自分の睡眠、部下の睡眠をともに重視する「スリープ・リーダーシップ」が重要
■ 睡眠不足のときでも、習熟度の高い「スキル」は、それほど影響を受けない
■ 睡眠不足のときには、「判断力」は著しく低下する
■ 「頭を使う仕事」「目を使う仕事」「体を使う仕事」の順に睡眠が大切
■ 自分の睡眠、部下の睡眠をともに重視する「スリープ・リーダーシップ」が重要