「不安全情報」を徹底的に集めたNASA
宇宙開発で有名なNASA(米航空宇宙局)は、あまり知られていない重要な仕事もしています。それは航空機の「不安全情報」を集めることです。
1970年代までは、死者100人規模の大きな航空機事故が相次ぎました。
事故防止は急務であり、それには事故に至る前のミスやエラーの段階の情報をたくさん集めることが重要と考えられていました。
そこで、NASAとFAA(米連邦航空局)が協力して、1976年にASRS(航空安全報告システム)という制度をスタートさせました。
これは画期的な制度でした。
というのは、パイロットの責任を問わないことを約束したからです。それ以前からパイロットにミスを報告させようという動きはあったのですが、自分のミスを報告することによって、航空当局から免許停止などの処分を受ける恐れがあったため誰も報告しませんでした。
新制度は、報告者に対しては、一定の条件のもとにミスの責任を問わないことにしたのです。
すると、あっという間に大量のミス情報、不安全情報が集まり始めました。
NASAはそれらを分析して航空機の安全運行に役立つ情報に変えていきました。
多くの人が安心して飛行機に乗れるようになったのは、NASAの仕事に負うところが大きいと思います。
制度開始から40年が過ぎましたが、2016年には年間で9万件以上の不安全情報の報告が集まっています。「着陸のときに、他のことに気をとられて降着装置(脚)を出し忘れました。あわてて出しました」といった、誰にもバレないようなミスも報告されています。
これらはテーマごとに整理されて、わかりやすい月次レポートにまとめられています。
NASAのASRS。月次レポートCALLBACKも読める
パイロット、客室乗務員、整備士、地上職員、管制官が不安全情報をNASAに報告し、それをNASAが整理してレポートにする。レポートは、みんなで読んで情報を共有する。いわば、航空業界の全員が会社の枠を超えてチームになっているような状態です。
「航空機に関わる全員が航空安全に貢献しているんだ」という意識を高める役割も果たしていると言われています。
1970年代までは、死者100人規模の大きな航空機事故が相次ぎました。
事故防止は急務であり、それには事故に至る前のミスやエラーの段階の情報をたくさん集めることが重要と考えられていました。
そこで、NASAとFAA(米連邦航空局)が協力して、1976年にASRS(航空安全報告システム)という制度をスタートさせました。
これは画期的な制度でした。
というのは、パイロットの責任を問わないことを約束したからです。それ以前からパイロットにミスを報告させようという動きはあったのですが、自分のミスを報告することによって、航空当局から免許停止などの処分を受ける恐れがあったため誰も報告しませんでした。
新制度は、報告者に対しては、一定の条件のもとにミスの責任を問わないことにしたのです。
すると、あっという間に大量のミス情報、不安全情報が集まり始めました。
NASAはそれらを分析して航空機の安全運行に役立つ情報に変えていきました。
多くの人が安心して飛行機に乗れるようになったのは、NASAの仕事に負うところが大きいと思います。
制度開始から40年が過ぎましたが、2016年には年間で9万件以上の不安全情報の報告が集まっています。「着陸のときに、他のことに気をとられて降着装置(脚)を出し忘れました。あわてて出しました」といった、誰にもバレないようなミスも報告されています。
これらはテーマごとに整理されて、わかりやすい月次レポートにまとめられています。
NASAのASRS。月次レポートCALLBACKも読める
パイロット、客室乗務員、整備士、地上職員、管制官が不安全情報をNASAに報告し、それをNASAが整理してレポートにする。レポートは、みんなで読んで情報を共有する。いわば、航空業界の全員が会社の枠を超えてチームになっているような状態です。
「航空機に関わる全員が航空安全に貢献しているんだ」という意識を高める役割も果たしていると言われています。
コミュニケーション改善が事故防止のカギ
NASAが不安全情報を研究した結果、重大事故につながりやすいのはコックピット内のコミュニケーションの失敗だということが明らかになってきました。
エンジントラブルなどが発生しても、コックピット内のコミュニケーションが保たれ、適切に対処された場合は危機はかなり回避されています。その反対に、トラブル発生のストレスで、機長がイライラして怒鳴り始め、他のクルーが機長に対して物を言えなくなったときには、重大事故につながっています。
機長がクルーの意見を聞かない状態は、コックピット内には機長一人しかいないのと同じであり、他のクルーの人的資源(リソース)がまったく生かされていない状態です。
NASAはコックピット内のコミュニケーションを改善する訓練としてCRM(クルー・リソース・マネジメント、当初の呼び方は、コックピット・リソース・マネジメント)を開発しました。
機長はストレスがあっても怒鳴ったりしないで、他のクルーの意見をきちんと聞く。他のクルーは機長に遠慮せず大事だと思うことを意見具申する。それによって、コックピット内のすべての人的資源が生かされます。
CRM訓練の導入によって、航空機事故は著しく減少したとされています。
意外に思うかもしれませんが、航空機が安全になったのは、技術面よりも人と人のコミュニケーションの改善が大きいと考えられています。
エンジントラブルなどが発生しても、コックピット内のコミュニケーションが保たれ、適切に対処された場合は危機はかなり回避されています。その反対に、トラブル発生のストレスで、機長がイライラして怒鳴り始め、他のクルーが機長に対して物を言えなくなったときには、重大事故につながっています。
機長がクルーの意見を聞かない状態は、コックピット内には機長一人しかいないのと同じであり、他のクルーの人的資源(リソース)がまったく生かされていない状態です。
NASAはコックピット内のコミュニケーションを改善する訓練としてCRM(クルー・リソース・マネジメント、当初の呼び方は、コックピット・リソース・マネジメント)を開発しました。
機長はストレスがあっても怒鳴ったりしないで、他のクルーの意見をきちんと聞く。他のクルーは機長に遠慮せず大事だと思うことを意見具申する。それによって、コックピット内のすべての人的資源が生かされます。
CRM訓練の導入によって、航空機事故は著しく減少したとされています。
意外に思うかもしれませんが、航空機が安全になったのは、技術面よりも人と人のコミュニケーションの改善が大きいと考えられています。
「おとがめなし」が安全を生むことも
危機管理の専門家アイアン・ミトロフ教授は「ノー・フォールト・ラーニング(過失を責めない学習)」という考え方を提唱しています。
責めたり、罰したりしないで、ミスや事象からみんなで学んで、次に同じことを起こさないようするという考え方です。
NASAが「不安全情報」を集めて、航空安全のための「価値ある情報」に変えることができたのは、"おとがめなし"にしたことが大きな意味を持っています。
安全対策としては、「罰則を強化する」ということばかりに目が行きがちですが、人間心理からすると、「正直に報告した場合には免責にする」という方法はかなり有効です。
重大事故につながってしまった場合は別ですが、事故に至らず故意のものでなければ、報告してくれた人は免責にして、詳細な情報を得ることのほうが重要かもしれません。
事故を防ぐためには、「罰する条件」ではなく「罰しない条件」を真剣に考えてみることも一つの方法です。
責めたり、罰したりしないで、ミスや事象からみんなで学んで、次に同じことを起こさないようするという考え方です。
NASAが「不安全情報」を集めて、航空安全のための「価値ある情報」に変えることができたのは、"おとがめなし"にしたことが大きな意味を持っています。
安全対策としては、「罰則を強化する」ということばかりに目が行きがちですが、人間心理からすると、「正直に報告した場合には免責にする」という方法はかなり有効です。
重大事故につながってしまった場合は別ですが、事故に至らず故意のものでなければ、報告してくれた人は免責にして、詳細な情報を得ることのほうが重要かもしれません。
事故を防ぐためには、「罰する条件」ではなく「罰しない条件」を真剣に考えてみることも一つの方法です。