福知山線事故から学ぶ「遅れ」の心理
平成17年に起こったJR福知山線の列車脱線事故では、多数の方が亡くなられ、怪我をされました。
私たちは、犠牲となった方々のためにも、事故を記憶し、事故から学ぶべき点を探っていかなければならないのではないかと思います。
ここでは、技術的な要因を除いて、ヒューマン・ファクター(人的要因)に絞って見ていきたいと思います。
国土交通省から公表されている鉄道事故調査報告書(平成19年6月28日)によりますと、 当該列車は、1つ前の駅に停車するときにオーバーランをし、所定の停止位置までバックしました。 そのため、出発時間が約1分20秒遅れました。
運転士は、遅れを取り戻すために列車を加速させました。カーブにさしかかりましたが、運転士は車内通信のやりとりなどで注意がそれていて、ブレーキをかけるのが遅れました。 その結果、列車が脱線したとされています。
ヒューマン・ファクターとしては、
調査報告書の中では、運転士50名ほどへのアンケート調査も行われており、次のような結果が出ています。
Q 自分が運転する列車が遅れる場合、どの程度の遅延時間のときが最も心理的な負担になり運転のミスにつながりやすいと思うか?
(遅延時間) (割合)
1分未満 24%
1分以上3分未満 61%
3分以上10分未満 8%
10分以上 10%
(複数回答者が1名いた)
私たちは、犠牲となった方々のためにも、事故を記憶し、事故から学ぶべき点を探っていかなければならないのではないかと思います。
ここでは、技術的な要因を除いて、ヒューマン・ファクター(人的要因)に絞って見ていきたいと思います。
国土交通省から公表されている鉄道事故調査報告書(平成19年6月28日)によりますと、 当該列車は、1つ前の駅に停車するときにオーバーランをし、所定の停止位置までバックしました。 そのため、出発時間が約1分20秒遅れました。
運転士は、遅れを取り戻すために列車を加速させました。カーブにさしかかりましたが、運転士は車内通信のやりとりなどで注意がそれていて、ブレーキをかけるのが遅れました。 その結果、列車が脱線したとされています。
ヒューマン・ファクターとしては、
■ 「遅れ」を取り戻そうと思った
■ 注意がそれた
という2つの点は、大きなポイントです。
■ 注意がそれた
調査報告書の中では、運転士50名ほどへのアンケート調査も行われており、次のような結果が出ています。
Q 自分が運転する列車が遅れる場合、どの程度の遅延時間のときが最も心理的な負担になり運転のミスにつながりやすいと思うか?
(遅延時間) (割合)
1分未満 24%
1分以上3分未満 61%
3分以上10分未満 8%
10分以上 10%
(複数回答者が1名いた)
微妙な遅れのときが、一番危険?
この調査結果によれば、3分未満の「遅れ」のときには、心理的負荷が高まり、ミスをしやすいようです。
報告書の中では「3分以上の遅れが比較的負担になりにくいことについて、遅れが3分以上となると回復することを諦める旨回答した運転士が多かった」と付記されています。
私たちは、「遅れ」が大きくて回復不能な場合は、あきらめの気持ちになり、時間的なストレスをあまり感じなくなるのかもしれません。
しかし、取り戻せそうな「遅れ」の場合は、「まだ何とかなる」という思いが強くなって、ストレスが高まってしまうようです。
私自身、最近、そういう失敗をしています。
ある用件があり、待ち合わせ時間にちょうど間に合うくらいの時間に家を出ました。
駅に着いたら、電車がホームに入ってくるアナウンスが聞こえました。「急げば乗れる」と思って走ったのですが、交通カードの残高が足りなかったため、あわてて券売機でチャージしました。
改札を入ったところで「あっ!」と、券売機前に忘れ物をしたことに気がつきました。
戻って忘れ物を取りに行き、結局、電車を2本乗り過ごしました。
「急げば乗れる」と思ったことで、「この電車に乗る」ということにだけ注意が向いて、他のことに注意が向かなくなってしまいました。
報告書の中では「3分以上の遅れが比較的負担になりにくいことについて、遅れが3分以上となると回復することを諦める旨回答した運転士が多かった」と付記されています。
私たちは、「遅れ」が大きくて回復不能な場合は、あきらめの気持ちになり、時間的なストレスをあまり感じなくなるのかもしれません。
しかし、取り戻せそうな「遅れ」の場合は、「まだ何とかなる」という思いが強くなって、ストレスが高まってしまうようです。
私自身、最近、そういう失敗をしています。
ある用件があり、待ち合わせ時間にちょうど間に合うくらいの時間に家を出ました。
駅に着いたら、電車がホームに入ってくるアナウンスが聞こえました。「急げば乗れる」と思って走ったのですが、交通カードの残高が足りなかったため、あわてて券売機でチャージしました。
改札を入ったところで「あっ!」と、券売機前に忘れ物をしたことに気がつきました。
戻って忘れ物を取りに行き、結局、電車を2本乗り過ごしました。
「急げば乗れる」と思ったことで、「この電車に乗る」ということにだけ注意が向いて、他のことに注意が向かなくなってしまいました。
焦りによるミスをどうやって減らすか
では、どうしたら遅れそうなときの焦りによるミスを防げるでしょうか。
遅れが出ているときには、自分の状態を自覚することで、冷静さを取り戻せるとされています。
「遅れているから、私は焦っている」「タイム・ストレスがかかっているから、慎重に」などと認識することが、焦りによるミスを起こりにくくするようです。
自分自身の反省を込めて言えば、やはり、時間の余裕を持って出かけるべきだったと思っています。
ギリギリの時間に出かけたことが最大の間違いでした。また、交通カードには、残高が少なくなってきた時点でチャージしておくべきでした。残高に余裕があれば、ミスをしなかったかもしれません。
「遅れ」による焦りから来るミスを減らすには、事前にきちんと「準備」をし、余裕をつくっておくことが重要だろうと思います。
「物理的な準備」とともに、「頭の中の準備」も役に立つと言われています。
あらかじめ頭の中でシミュレーションしておくと、実際に出来事が起こったときに、ストレスに影響されることなく落ち着いて考えられることがわかっています。
事故調査報告書のデータからわかるように、3分未満の遅れが案外危険なようですから、「1分遅れているときは、どうするか」「3分遅れているときは、どうするか」といったシミュレーションをしておくと、遅れが出たときのミスの減少に役立つかもしれません。
遅れが出ているときには、自分の状態を自覚することで、冷静さを取り戻せるとされています。
「遅れているから、私は焦っている」「タイム・ストレスがかかっているから、慎重に」などと認識することが、焦りによるミスを起こりにくくするようです。
自分自身の反省を込めて言えば、やはり、時間の余裕を持って出かけるべきだったと思っています。
ギリギリの時間に出かけたことが最大の間違いでした。また、交通カードには、残高が少なくなってきた時点でチャージしておくべきでした。残高に余裕があれば、ミスをしなかったかもしれません。
「遅れ」による焦りから来るミスを減らすには、事前にきちんと「準備」をし、余裕をつくっておくことが重要だろうと思います。
「物理的な準備」とともに、「頭の中の準備」も役に立つと言われています。
あらかじめ頭の中でシミュレーションしておくと、実際に出来事が起こったときに、ストレスに影響されることなく落ち着いて考えられることがわかっています。
事故調査報告書のデータからわかるように、3分未満の遅れが案外危険なようですから、「1分遅れているときは、どうするか」「3分遅れているときは、どうするか」といったシミュレーションをしておくと、遅れが出たときのミスの減少に役立つかもしれません。