心の「多様性(ダイバーシティ)」は、
ストレスのショックを和らげるのに有効です。では、なぜ、心の中の多様性を保つとショックが和らぐのでしょうか。
これは、多様化戦略がよく用いられているビジネスの世界の例で考えてみるとよくわかります。
多様化戦略が用いられている一番有名な分野は、「投資」です。たとえば、自分の持っている資金をすべて一つの会社の株式に投資してしまうとしましょう。この場合、マーケットの環境が変わると、その会社の株価が大幅に下がって、大きな損失を被ることがあります。全額を一つの銘柄に投資してしまうことは、儲かったときの利益は大きくなりますが、リスクも大きくなります。
そこで、
リスクヘッジ(リスクを減らす)戦略として用いられているのが、多様な銘柄、多様な金融商品に分散して投資する方法です。一つの国の金融商品だけではなく、多様な国の金融商品に投資する場合もあります。
多様な金融商品に投資しておけば、マーケットの環境が変わって、ある保有株の株価が下がったときにも、別の金融商品の価格が上がっていて、損失をカバーできる可能性が高まります。たとえば、円安で株価が上がりやすい会社の株式と、円高で株価が上がりやすい会社の株式を、共に保有していれば、円安にふれても、円高にふれても、どちらかがカバーしてくれるので、リスクを減らすことができます。
ポートフォリオ(保有金融商品の構成)を多様化させておくと、リスクをヘッジできる可能性が高まるのです。
同様に、心の中のを多様化させておくと、環境が変わったときにも、リスクをうまく吸収して、ショックを和らげられる可能性が高まります。
たとえば、いろいろなことに興味を持っている人は、一つの分野でつまずいても、そのことだけで過度に落ち込まないで、
別の分野のことでカバーできることがあります。
会社を取り巻く環境が変わって、急にリストラされてしまったときにも、会社の仕事だけに集中していた人は、ショックが大きくなりますが、多様な能力や資格を持っている人は、リストラ危機のショックを多少は和らげることも可能です。社内外に多様な人脈を築いている人なら、まわりの人に助けてもらえるかもしれません。
つまり、
多様化させておくことは、予期せぬ環境の変化が起こったときのリスクヘッジにつながるのです。金融ポートフォリオを多様化させるのと同じように、心のポートフォリオも多様化させておくと、ストレスのヘッジになります。