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脳のキャパシティ
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ストレスがあると、状況判断などの認知能力が低下し、エラーが起こりやすくなります。
ストレスによって認知能力が低下するメカニズムは、脳がリソース不足になるためと考えられています。これは、ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンによる「リソース・モデル」が基盤となっています。脳の資源(注意力の量、ワーキング・メモリーの量)には限界があるという考え方です。
ストレスの処理に脳の資源が振り向けられると、その分だけ、タスクに脳の資源を配分できなくなります。脳のキャパシティが減るために、処理できる情報量が減少して、認知能力が低下するという考え方です。
例えば、人間関係でストレスを感じていると、その人間関係のことが気になって頭の中がいっぱいになり、仕事に意識が向かなくなって、ミスをしたり、能率が低下したり、判断を間違えたりすることがあります。
なお、こうした認知能力の低下を防ぐ方法も研究されています。1つは、タスクに習熟することです。「目をつぶっていてもできる」というほどに習熟していると、脳のワーキング・メモリーをほとんど使わずにタスクの処理ができます。自動化という方法です。ベテランの人は、ストレスがあっても、ほとんど能力を低下させずにルーティンの仕事なら難なくこなせます。
このほか、事前の入念な「準備」という方法もあります。
人間は、リソースが減っても、エフォート(努力)を増やしたり、ストラテジー(戦略)を変えたりして補うことができるため、ストレスによって一律に認知能力が下がるわけではありませんが、何も対応をしないと、エラーは起こりやすくなります。